レッツゴー!!おスナック
昭和が生んだ日本のおスナック(作者東陽片岡氏はスナックをこう称する)とムード歌謡の文化に対する愛を綴った単行本。
それまではどの様な外圧にも影響されないしされようにも方法が解らない人間達の話を多く描いていった筆者が、この漫画では自身がPCも未だ持たぬデジタルデバイドの状態ながら己が愛するおスナック文化存亡の危機に救済のボランティアを買って出たのには驚いた。それも身銭を切って通う以外にムード歌謡歌手の営業に付き添ってCDを売る等の草の根活動なのだ。
そして面白い。この漫画でなければ網羅出来ない様な貴重な音源が作者の解説付きで紹介されているのを始め、作者がライブで身銭を切って通ったおスナック文化の絶妙な描写が雄弁にこの文化を消していいのか、いや、消えてしまっても仕様がないのか、と語りかけて来るのだ。
ここにはカラオケのマナー講習から、どんな状況、ボッタクリや化け物ママでも人を許し楽しもうとする「一億総クレーマー」の状況とは真逆の粋とヌルさが有り、加えてバイク乗りでも有る作者のツーリング哲学の様な物も垣間見られ実に興味深い。
濃厚過ぎる画風に隠れがちであるが真の趣味人の描いた面白漫画、お薦めです。
熟女ホテトルしびれ旅
2006年から2010年に掛けての週刊漫画サンデーの連載から東陽片岡さん自らが体験したホテトルのレポート漫画のみをまとめた物です。
いつもながらの氏のクレーマーとは程遠いゆるやかさを愛する粋な心が風俗と言うもっとも男の地が出る場所でも発揮されていて素晴らしいです。
連載時はブレンドされていた作者の他の趣味であるバイクやスナック通いを題材とした作品より一般の方には敷居が高いかもしれませんが、東陽片岡さんのファンには限りなくお薦めです。
しかし、事実上本誌の最後のエピソードで氏の連載は打ち切られており、「あとがき」の内容にも一抹の寂しさが漂って居ます。それでも最後はお得意のフレーズが飛び出すと何とかなりそうな気がして来るから不思議です。
本テーマは連載誌は11年間不動だったにも関わらず、単行本化は別の複数の出版社からされて居る様で、なおかつ抜粋の為、例えば『直立チ○ポの納品先はも一回のうぐいす谷だった』では作中で触れられた過去エピソードを表す「ひょの15」から該当作を追う事が出来ないのが少々残念でした。
脚注等で収録単行本を教えて頂ければ有りがたかったのですが、それでも氏の作品を出版して下さるだけでも青林工芸舎さんには感謝しております。