すべて真夜中の恋人たち
デビュー作から最新のエッセー、雑誌や新聞などのこまごした文章まで読んでいるほどの、川上未映子ファンであるし、すべて真夜中の恋人たちも、本になるのが待ちきれなく、群像を買って読んだのだけれど、正直、読みすすめるのが辛かった。しかしでも思うのは、この「すすまない感じ」が、すべて真夜中の恋人たちの、狙いの一部なんじゃないかということ。
この「すすまなさ」は、本作が初めてじゃない、川上ファンならきっと
感じると思う。あのたたみかけるような怒涛の未映子節が恋しくなる反面、すべて真夜中の恋人たちのなかの、人物が語るセリフの数々は、やや詩的だけれど、一つ一つ洗練されていて、川上さんのうでを感じずにはいられない。「光のようなものをかきたい」と言っていた意味が、とくにセリフに顕れていると思う。
恋愛小説という読み方をしないほうが、愉しめる。とにかくページの
いたるところで、セリフが輝いている。川上さんの言葉のセンスというのに
惚れ惚れする人は、少なくないはずだし、恋愛小説としては失敗している
という人もおられる。しかし、ファンにとっては、ヘヴンに続くほどの
衝撃はないかもしれないけども、こんな川上未映子もあるのか、という
驚きと、発見がある。
夢みる機械
川上未映子としての芥川賞受賞及び候補作に感じ入るものがあったので、自ら作詞を手がけていた本CDを購入しました。全ての作品の完成度が高いと言えなくとも、心・魂に響くメッセージとその歌声に魅かれました。
声の色や質感や響き、歌詞が合うかなんて個人の趣味の問題で、単純に好きか嫌いかですが、歌声を聞いたときに、初めて千住真理子さんのコンサートでヴァイオリンの音色を聞いた時のような、これまでにない音に出会った感動を覚えました。
「愛をもっと」、「初恋」、「千と一夜の軌跡」「悲しみを撃つ手」は聞き応えがあると思います。但し、「悲しみを撃つ手」はアルバム「頭の中の世界と結婚」の方が完成度が高いです。
パンドラの匣 [DVD]
主人公のひばり役、染谷将太くんがスゴイ!あの雰囲気、あの表情、目つき…
18歳とはとても思えない、大人びた憂いのある表情。
18歳でこんな風になれるものなのかと感心してしまいました。
この人はもう少し年をとったら、イイ男になるに違いないです。
あと、川上未映子。作家さんなのに、なんでしょうこの存在感。
見た目はそこまで華やかだったり美人なタイプではないのに、
話が進むうちに、だんだんと綺麗に見えてくる…
この人の美しさは見た目じゃなくて、内面からにじみ出る妖艶さや凛とした美しさなのでしょうね。
仲里依沙もいい。現代っぽすぎて、最初は違和感を感じるのですが、
そこがこの作品の浮遊感だったり、飄々とした雰囲気につながっているんだと思いました。
ふかわりょうも意外に(笑) なんかこの雰囲気に合ってる(笑)
ラストのひばりの「悲哀」と「希望」。
この「希望」があるから、救われるし暖かくなる。
ひばりの「パンドラの匣」に「希望」が残ってよかった。
独特の雰囲気でラストまで漂っていった、心地よい映画でした。
うちにかえろう~Free Flowers~
少し前(と言っても約3年)に、NHKのCFに使われていた曲でした。 プロジェクトXにかぶせたCFだったので、もしや「中島 みゆき」さんの新曲か?と思ってCDを探した記憶があります。
ハスキーで声量もある、実力もありそうなのに、新作が出てこないですね、ちょっと気になります。
ヘヴン
主人公と百瀬(苛める側の一員)のやり取りが印象的だった。
人間のもっている主観は人それぞれ違うものだ。だからお互いを本当に知ろうと思ってもそれはできないのかもしれない。
主人公の言い分が百瀬に通じなかったのもそのせいだろう。
百瀬と主人公はわかりあえなかった。
一度はわかりあえそうだった主人公とコジマも本当はわかりあえなかった、と思う。
だから悲しい、というわけではない。人間とは、そういうものだ。
そう感じた。