放浪時代・アパアトの女たちと僕と (講談社文芸文庫)
表題作の『放浪時代』 昭和初期の東京の片隅でショウウインドウの飾りつけなどを生業にして過ごしている主人公Uと、曽我、その妹、魔子のトライアングルな関係は、映画『冒険者たち』のアラン・ドロン、リノ・ヴンチュラ、ジョアンナ・シムカスの関係を彷彿とさせます。そして、その永遠に終わらない夏休みのような三人の暮らしぶりから何故か漂ってくる淡いペーソスは、押井守の映画から漂うそれを思わせます。惹きつけられるその理由は定かではないのですが、初めてこの作品を読んだ時から、この作品の醸し出すそんな風なニュアンスに惹きつけられ続けています。