鋼鉄の処女
当時高校1年生でアメリカンTOP40マニアだった私をヘヴィーメタルの泥沼に引きずり込んだアルバム。それまでヘヴィーメタルなんて聴いたことも無かったのに、魔が差してレンタルレコード(懐かしー)でなぜか借りてしまったこのアルバム。ジャケットの強烈さに引き込まれ、伊藤政則氏のライナーノーツに興味を持ったのがその原因だ。
レコードに針を落とした瞬間、キーボードサウンドに馴染みきった私の体に激しいギターリフが突き刺さる。な、な、何だこれは!でも、気持ちいい!そして、かっこいい!リーダーであるスティーヴ・ハリスの独特のバキバキベースに引っ張られ、ギターが疾走する。そして、その激しいサウンドに乗るポール・ディアノのヴォーカルがメロディーを維持したままシャウトする。聴き込むほどにその独特のアレンジにも引き込まれる。特に圧巻は、5”PHANTOM OF THE OPERA”であろう。ポップスでは有り得ない複雑な曲展開、メロディー。メイデンの特徴のひとつでもあるハモるツインギターも最高の見せ場を作る。
最初に聴いたヘヴィーメタルがこのアルバムでよかった!でも、他のアルバムを聴いてもなかなかピンと来ないのは、きっとこのアルバムのあまりの素晴らしさ故だ!
鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)
銀河帝国興亡史シリーズを完読した後なので、時代は遡って近未来の地球を舞台で同じロボット・ダニールが登場するのは興味深かった。アシモフのSFはSFでありながら人間心理の葛藤がストーリーの重要な部分を占めるところが面白い。
鋼鉄の叫び
特に意識したわけではないが、百田尚樹氏の「永遠の0」を読了してさほど間もないのに、手に取った本書はやはり第二次大戦の特攻隊員をモチーフにした作品であった。
ストーリーは全く異なるが、何れも現代日本に生きる男女が特攻隊員について調査して、現代の感覚で振り返るという設定は似ている。大きく異なるのは「永遠の0」では現代と過去の割合が1対9ぐらいで過去に比重におかれていたのに対し、本書は6対4か7対3ぐらいで現代に重点がおかれている点だ。
「永遠の0」は特攻で死んだ祖父がどのような人物だったのかを調べるという筋書きであったが、本書はテレビのプロデューサーの雪島忠信が、終戦50周年のスペシャル番組のために、特攻に出撃しながら自分の意志で引き返して生き残った人を探そうとするのがメインストーリーだ。そんな人がそもそも実在するのかという疑問もわくが、本書ではその調査の過程をかなりの説得力を持たせて描いており、ミステリー小説としても結構楽しめる。
そして並行して描かれるのが、主人公の雪島忠信と人妻の倉沢菜都子との恋の行方である。不倫ではあるものの二人は真剣であり、特攻隊員の調査と二人の恋の行方が最後には絡み合っていく展開は見事で、読み応えのある作品となっている。
ただ一つ疑問なのは「鋼鉄の叫び」というタイトルだ。濃密な人間ドラマが描かれているのに、何故「鋼鉄」なのか理解できない。せっかくいい小説なのにこのタイトルだけで読む気をなくす人もいるのではないだろうか。もったいない気がする。