一命 (講談社文庫)
滝口康彦と言う作家を今まで全く知りませんでしたが、この短編集を読むと、どれも心に沁みる作品ばかりで驚きました。
この中には、「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上位討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」の六編が収められています。
どれも秀作なのですが、「異聞浪人記」「拝領妻始末」は、共に映画化されているだけあって読み応え十分です。
その他の作品も、ミステリアスな作品もあり、楽しく読むことが出来ます。
この六編は、いずれも「時代小説」なのですが、どのテーマも現代社会に通じる作品ばかりで、一層心に残ります。
こんな素晴らしい作品を書いた作家を全く知らなかったこともあって、記憶に残る一冊になりました。
切腹 [DVD]
仲代達矢の鬼気迫る演技。三国連太郎の憎たらしい江戸家老。
封建社会の矛盾をこれほど完璧に描いた作品は少ない。
武満徹の音楽もすばらしい。
黒澤明と並ぶ小林正樹監督はもっと再評価されるべきと思う。
のちに製作された上意討ち拝領妻始末もこれと並ぶ傑作とおもう。
早期DVD化を望む
遺恨の譜 (新潮文庫)
「薩摩藩の勤皇派による先走りを、上意によって阻もうとした寺田屋の変。辛くも生き残った志士たちは、国元へ送り返されたかにみえたが、長州とのリーダーシップ争いに腐心する薩摩藩としては、若者たちに苛酷な運命を刻印せざるをえなかった! 歴史の変動に挟みこまれた犠牲者のうめき、酷薄な人生を、鮮やかに浮き彫りにする表題作等四篇。」
カバーの解説文より
・収録作品 「青い落日―沖田総司」「遺恨の譜」「古心寺(こしんじ)の石」「酔小楠(すいしょうなん)」
・解説 尾崎秀樹(おざきほっき)
上意討ち-拝領妻始末- [DVD]
立派な作品です。小林正樹監督らしい真摯な精神に溢れた作品です。しかし、同じ小林正樹監督の『切腹』と較べると、物語の展開に今一つスリルが不足して居て、見劣りがしてしまふ事は残念です。−−『切腹』を見て居ない方は、是非、御覧下さい。『切腹』は、日本映画のみならず、世界映画史上に残る傑作です。
それにしても、『切腹』や『上意討ち』で、小林正樹監督が描いた「組織に裏切られた個人」への視線が、小林正樹監督のドキュメンタリー『東京裁判』に生きて居ると感じるのは、私だけでしょうか?
(西岡昌紀・内科医/戦後61年目の夏に)
立花宗茂と立花道雪 (人物文庫 た 5-1)
道雪の強い請いで立花家の養子となった高橋家の嫡子宗虎(立花宗茂)が秀吉に取り立てられるまでの壮絶な青年時代を描いた長編。若き日の立花宗茂と、養父であり「鬼道雪」と恐れられた猛将立花道雪、実父であり豊後大友家の勇将高橋紹運の物語。「嗚呼壮絶岩屋城跡」の石碑が残る岩屋城での紹運の奮闘、父子の想いは、思わず涙するところ。ストーリー性や人物像など、この手の人物文庫とは思えぬ質の高さ。傑作。必読の一冊。