ゴールデンスランバー [DVD]
はめられて冤罪で逃げる主人公、悲壮感なくて笑えて、最後まで楽しめました。俳優さんの持ち味も出て・・・そんなんありえへんやろとツッコミながら見ていました。
両親、友人達が犯人でないと信じていたり、他人が助けてくれたり、漫画みたいな刑事(公安?)と殺し屋みたいな人とかの行動が面白かったですよ。
死神の精度 (文春文庫)
「仕事だからだ」
人の死の1週間前に派遣され、その死について「可」または「見送り」の判断をするのが死神である彼の仕事だ。「人の死には意味がなくて、価値もない」。彼はどんな立派で愛すべき人間であろうとも淡々と「可」の判断を下す。そして彼はまた今日も対象者の下に派遣される。外はいつものように雨・・・
伊坂節全開の短編集。伊坂ファンにはおなじみのクールでスタイリッシュな会話の数々や雰囲気を盛り上げる音楽の登場。表紙や各編の冒頭を飾る味のある写真たち。深遠でありながら軽やかな会話に酔いしれること間違いなしです。
構成も見事。ぱっとしない若い女からヤクザ、殺人犯、老女まで。一見つながりのないこれらのお話。でも実は・・・これは最後まで読んでのお楽しみ。なお、おなじみの「他の作品のキャラ」とのオーバーラップももちろんあります。伊坂ファンにとってはうれしい限りです。
死という重いテーマの作品でありながら、エンターテイメントとして十分に楽しめます。全部の章を読み終えたとき、あなたのこころは爽やかに晴れ渡っていることでしょう。
重力ピエロ 特別版 [DVD]
「面白い」と言ってしまうと誤解が生じるかもしれない。
「深み」がある作品。
初期の原作は「別の物語の登場人物同士の登場人物がリンクする」という面白さもあるけれど「映画」となると、脚本家や監督、映画会社も全て一緒という訳には行かないのでリンク出来ないのは当然かもしれない。
最近のドラマや映画の多くは何でもかんでも、主人公が幸せに終わる「ハッピーエンド型」が多くて、それが現実味を感じられない。
現実はハッピーエンドなんてものは殆ど無い。
単にイケメンが出てハッピーエンドで終わるような薄っぺらな作品とは違う。
顛末は賛否が分かれると想う。それがこの作品の目的かもしれない。別に復讐や放火をすることを美徳として描いている作品ではない。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
読了してここまでもどかしい気分になった小説も久しぶりだった。今更ながら日本のSF史に残る傑作であることは言うまでもないし、それだけにもうほんの少しだけのリアリティと小説上の工夫があればと、処女作にこれを描き切った作者の夭折と合わせて残念でならない。小説内で用いられているエピソード、ガジェットやモチーフの引き出しの多さが世界観の構築に寄与しているのは認めるものの、それらの使い方の詰めの甘さ(もう一捻り欲しいというか)を感じるのだ。
なぜピザハットとFOXじゃなくて、ドミノ・ピザとCNNなのか。なぜもう一回NYでもなくテルアビブでもなくマーレーアドミームでもなくドバイでもモスクワでもなく、サラエボなのか。そもそも最初の引き金がなぜムスリム原理主義なのか。なぜジョン・ポール(ヨハネ・パウロ)という命名なのか。だったらなぜLTI、ルワンダの煽動ラジオなど近現代の文献だけが対象なのか。有史以来宗教の名のもとに行われてきた虐殺行為の数々は?等々の疑問がどうしても現在の延長線上にあるこの小説世界のリアリティを私的には損なってしまっていた。それがもどかしかったのだ。
多分、ものすごく贅沢な注文で、凡百の日本の国際謀略小説の多くが全共闘くずれの妄想かリアリティのないゲーム的小説に終始してることを考えれば、これ以上ないくらい贅沢な注文であることもわかっているので、とても星5つ以下にはできない。
ゴールデンスランバー (新潮文庫)
文庫版で約680ページの大長編です。
第一部が「事件の始まり」、第二部が「事件の視聴者」、第三部が「事件から二十年後」、第四部が「事件」、
第五部が「事件から三ヶ月後」という構成になっています。
本編というかメインは、第四部なのですが、その前3編で、事件を異なる視点で読者に見せます。
ケネディ暗殺事件に多少でも関心がある人には、ものすごく引き込まれるものがあると思います。
国やマスコミから「与えられる」情報がどういうものなのか、怖いくらいの描写です。
それにしても、物語の見せ方がうまいと思いました。
単に作品のストーリーを追うだけではなく、ミステリーという枠にとらわれず、
ケネディの事件と伊坂作品の「魔王」「モダンタイムス」とを思い浮かべながら、
著者のメッセージを考えるのも良いのでは。とても深いなと思えてきます。
そのかわり万人受けする作品ではないかもしれません。
私は、著者の10年間における集大成的な作品だと思いました。