新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)
君子がいくら善悪を峻別し徳の高い行いをしても、
それで民衆を治められるとは限らない。
君主(皇帝)は、善悪ではなく、人間性を観察して他人の行動を予測し、
政権が維持できるよう(民衆を長く、良く治められるよう)振舞うべし。
鋭い人間観察に基づいた、君主が備えるべき資質についての論考をまとめたもの。
冷徹な格言などの印象が強かったが、
あくまでも、現実的な人間を踏まえた論考なので、
冷たいとか温かいとか善いとかではなく、
こう振舞ったら(人間は)こう動くだろう、だからこうした方がいい、という話。
人間観察部は、現在にも大いに通じるところがある。
(というか、人間が変化できていないというべきなのか・・。)
翻訳もとても読みやすかった。
NHKクラシカル 小澤征爾 ベルリン・フィル 「悲愴」 2008年ベルリン公演 [Blu-ray]
私の環境は80インチスクリーンでのプロジェクター+7.1chのシアタールームです。これまで見た映画ソフトよりブルーレイの良さが体感できるソフトでした。楽器や表情が明瞭でステージの息遣いが伝わってきます。このようなライブ感のあるクローズアップのドキュメント的な映像ではDVDとの差が歴然です。音声はドルビーデジタルやDTSを使っていないので、期待してませんでしたが、そういったエフェクトを介さないことで各楽器の生音が生きている感じがしましたし、十分すぎるほど音は拾えていると思います。ホールの臨場感より、ステージ上の生音を正確に再現が主たる目的であるソフトだと思います。個人的には2CHで聴いたほうが好みでした。映像に負けない大音量で聴くとさらにソフトが生きてきます。
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
現在小澤氏が去った後 Boston に住む身として誇りに思う名演は、日本で手にした。カラヤン盤を最初買ったが比べても、テンポの緩急と言い、極めてロマン的な好演である。
亡命したロストロポービチ氏は、ワシントン ナショナル交響楽団で指揮も勤める。小澤氏と親友であるが、日本の若者のために「音楽キャラバン」と称してボランティアで各地を回ってくれる。ロストロポービチ氏の発案と聞くが、お寺、小学校など、とても音響がよいとは言えない環境で若者と共に、このドボルザークを弾くに違いない。
世界に誇る小澤 Boston 響と、先達 チェロ大家とのこの曲最後の協演。6回目か。
Other Recommendation:
チャイコフスキー:弦楽セレナード/モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジー 斉藤秀雄先生の情熱が乗り移ったか、デビューアルバム
ニュー・イヤー・コンサート 2002 "息づかいが聞こえる" この他 DVD などもあり。
文明の衝突
1996年にSamuel Huntington氏が世に送り出した「文明の衝突」は 国際関係論に大きな影響を与えました。イデオロギーをベースにした超大国による冷戦体制の終焉にあたり、文明、文化圏をベースにした多元的拮抗体制への移行を予見した著者の洞察には感嘆するばかりです。冷戦終了後、東欧周辺で広まった民族紛争(チェチェン、アゼルバイジャン、アルメニア、クロアチア、セルビア、ボニスア)の解説は彼の論理を支持すると共に時事問題の歴史的背景理解の参考にもなります。大局としては、アジア地域の経済的発展、 イスラム圏の人口増加により、近代化で先行し軍事力を背景に勢力を拡大した西洋の相対的競争力の低下を予想。米国の多文化主義に懐疑的、西洋(ヨーロッパ)の将来は米国の西洋文化へのコミットメントに掛かっていると結論付けます。日本については特異な文明として孤立するリスクを指摘も、揺れる文明(Swing civilizations)としてロシア、インドと共に、今後の三大文明である西洋、中国、イスラムとの連携が鍵と見る。彼の予想は、日本はアジアでの成長を享受するため中国との連携を強め、インドは中国の勢力を牽制するため米国(西洋)との連携を強める。文明の大規模な衝突を回避するため、大国の他文明の紛争介入のリスクを警告。異文化との共通項を探り、相互理解を深めることが普遍的文明の向上に繋がるのではないかと結びます。 共通の利害と価値観を共有して初めて成熟した国際社会が成立する、との指摘。これから、文明間の鍔迫り合いを超えて、地球温暖化や気候変動等の世界的危機を機会に変えられないのか。。。