極北クレイマー
前作になるのか、『イノセント・ゲリラの祝祭』では、作者の意見を登場人物が述べているだけのようで、物語として読むのが少々苦痛にも感じたけれど、この『極北クレイマー』は滑らかにページが進んだ。
『イノセント〜』『ジーンワルツ』で触れられていた三枝先生の事件について、気になっていたので全貌を知ることができて個人的には嬉しかった。
しかし、病院、患者に対して真摯に対応してきた三枝医師に対しての、報道後の患者の対応や世間の意見は、読んでいて本当に辛かった。
でも同じような、医療ミス関連のニュースをテレビで見ている自分が、彼らと同じではないと言えるのか、それを考えると自分には何も言う資格はないと思ってしまう。
病院の経営悪化にしても、公金使い込みなどで正常に金が流れず、一部の人間が他者を蔑にして権利を貪っているのを見ると、現実でも同じようなことが(公にされない部分でも)沢山あるのだろうし、それによって辛酸を嘗めさせられた人を思うと悔しくてたまらなくなる。
こんな感情も、作者の本を読むようになり、それが色々考えるきっかけになったので、今までのサスペンステイストを求めている読者には物足りないかもしれないが、十分に読む価値のある本だと思う。
スタジオジブリの歌
ナウシカからポニョまで、スタジオジブリの作品主題歌をレーベルの壁を越えてコンピレーションするというコンセプト自体は素晴らしいと思う。それこそ親子、家族で楽しめる素晴らしいコンピレーションアルバムだ。
なので、単体で考えれば文句なく星5つと行きたいところではあるが、前作の「スタジオジブリSONGS」を持っている方(かく言う私もそうである)には、10曲増えているとは言え前回収録の16曲がカブってしまうことになるので正直、微妙なところ。
前作購入者のことを考え、新規10曲のみ収録での単体発売をしてくれれば即購入しているのだが……。