死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張 (新潮新書)
死刑を廃止したら日本の社会は成り立たないと考えている私にとって、思わぬ人物の死刑在置論であった。特に後半の日本の薄っぺらい死刑廃止論者が判を押したように語る死刑廃止の理由に対して、獄中死を自ら選択した無期懲役囚の立場から、凶悪犯罪者の本音を語ることによって丁寧に反論し、「死刑は絶対に必要と確信」するさまは塀の外の私達一般人より説得力がある。
また死刑の代替刑として考えられている終身刑に対しても理由を挙げてきっぱり否定し、裁判員へのアドバイスとして被告の「更生の可能性」は考慮しなくていいとはっきり言い切るなど著者でしか書けないことばかりで、非常に充実した内容だと言える。
人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白
1.内容
(1)「人を殺すとはどういうことか」→実行した本人より、周りの人、とりわけ被害者・遺族を過酷なまでに苦しめることである(p244を基にまとめた)
(2)「長期LB刑務所・殺人犯の告白」→分量的にはこちらがメイン(著者の殺人体験はあまりないように感じた)。人を殺すような人は、他人に対する共感や想像力が決定的に欠けているなど(まとめはp224)人として欠陥を持っている人が多いと言わざるを得ない。刑務所内でも、被害者・遺族に対する謝罪の心をほとんど持っていないものが多く、「反省」しても、それは自分の犯罪の失敗に対する反省だったりするなどする。
2.評価
殺人で無期懲役刑で服役している著者の告白、ならびに、長期刑務所内での受刑者のありようがわかるという意味で貴重な文献であり、オススメ出来る本である。ただ、(1)ヤクザに対して甘すぎる(「半端ヤクザ」(p219)とも話をして、真相に迫るべきだった)、(2)著者自身が他の殺人犯を非難することによって、「酔って」(p185)いるように感じられた、(3)「獣を一人でも多くの人間に戻すためにも、施設には受刑者の大好きなテレビ等も活用し、あらゆる機会を利用して欲しい」(p243)のような提言らしきものは散見されるが、不十分、などの欠点があるので、星5つにはならず、星4つ。
死刑と無期懲役 (ちくま新書)
終身刑を導入しろとか殺人犯は基本的に死刑にしろなどと厳罰主義を唱えている人の意見が机上で空論のあることをはっきりさせる現場からの現実の報告であると思います。
直感でいい人であることがわかるなどと感情的な部分もあります(もし裁判官がそんなだったら冤罪の大量生産になってしまう)。現場で何十年も刑務官をしていた経験は我々には想像もできないことの連続のようです。
それにしても、冤罪で刑務所にいる人がこれほど多いとはオドロキです。刑務官は冤罪受刑者をできるだけ早く仮釈放になるように努力しているようですがそもそも冤罪で収監されるひとがなくなるようにする仕組みが必要なんじゃなでしょうか。
いろいろと考えさせられる本です。国会議員の人たちに読んで欲しいです。