夜になるまえに
「キューバのブルジョワは、黒人の出であるバティスタを嫌い、イエズス会の学校で学びスペイン人農場主の息子であるカストロを支持した」(P.72)
「決起した人々の大半はバティスタ独裁があれほど速く崩壊するとは思っていなかった。バティスタが出国したというニュースが広まったとき、ぼくたちの多くは信じなかった。カストロ自身でさえびっくりして飛び上がった人間の一人だった。戦わないうちに戦いに勝ってしまった。カストロはもっとバティスタに感謝しなくてはならなかったのだ。独裁者は島を無傷のまま残し、カストロに傷一つ負わさずに出国したのだから」(P.78)
「ゲバラのスキャンダラスなホモ生活はキューバ中で、特にハバナでは衆知のことだが、他の者なら高くつくことはあっても、ゲバラほどの人物ともなると何をしても責任を問われなかった」(P.120)
「単に政治的姿勢のせいでボルヘスはノーベル文学賞を阻止されたのだ。ボルヘスは今世紀の最も重要なラテンアメリカの作家の一人である。たぶんいちばん重要な作家である。だが、ノーベル賞はフォークナーの模倣、カストロの個人的な友人、生まれながらの日和見主義者であるガブリエル・ガルシア=マルケスに与えられた。その作品はいくつか美点がないわけではないが、安物の人民主義が浸透しており、忘却の内に死んだり軽視されたりしてきた偉大な作家たちの高みには達していない」(P.390)
夜になるまえに【廉価2500円版】 [DVD]
数年前、この映画がDVDになってすぐ購入しました。誰が出演しているとかナントカ賞にノミネートとか全然良く見もしないで、「良くできた映画だなあ」「ケバい奴が出てるなあ」というレベルの認識でそのまま棚に置きっぱなしだったのです。それを数日前に引っ張りだして再び鑑賞しました。
この映画のラスト近くになると、前回見た時とは違って主人公の心がよくわかるようになりました。キューバに失望して米国に来たのにもかかわらず、この地でも絶望しか彼は得られなかった。何と文学者の魂は孤独なのでしょうか。
夜になるまえに [DVD]
ホモセクシャル、キューバ国、カストロ、革命、弾圧、投獄、亡命、エイズ、並べて見るとレイナルドの波乱万丈な人生を容易に想像できる。しかし実際は想像以上の厳しい人生だったであろう。何事にも真正面から対峙したレイナルドに感動した。シビアなストーリーにもかかわらず、思わず笑ってしまう場面も多い。「ホモセクシャル」は大きなキーワード。
ショーン・ペン、ジョニー・デップの出演は特筆に価する。特にジョニー・デップの二役については、本作品の価値とは全く別にして賞賛したい。それを自分の目で見ることを是非お勧めする。それによって本作のすばらしさも同時に体験できるものと思う。
夜になるまえに―ある亡命者の回想 (文学の冒険シリーズ)
美しい海、生きている悦びを味わった故郷。しかしカストロの独裁によって祖国に踏みにじられた青春とその才能。
とても辛い人生を書きながら、アレナスの言葉は読む者に弾けるような感動を与えます。キューバという国がアレナスの感性を育て、苦しめた。読む者に自由というものを考えさせる最高の自伝です。この感動は読まないとわからない。アレナスを知ること、とても貴重な体験になるに違いありません。
夜になるまえに ― オリジナル・サウンドトラック
ずっと見損なっていた映画を相当遅れて、やっと観ました。ジュリアン・シュナーベル監督作品3作中ではベストだと思いました。そして、音楽もベストでした。
特にキューバン・ミュージックのファンではありませんが、絶妙な陽気さと哀愁のミックスチャーは、当時のキューバを音楽自体が映画の主題を物語っていて、素晴らしい!
単に、あの映画に対する選曲が良かっただけかもしれませんが・・・。
逆に、音楽は音楽で完全に独立したパワーをもっており、音楽を聞いても映画のシーンを思い起こさせない。
通常映画は、映像と音楽が表裏一体になっており、どちらかが欠けると、どちらかだけだと、その両方の「マジック」が失われる。
何度も、それには失敗した経験があり、今回は成功!でした。
映画の内容と同等にその音楽も優れていたと思います。
そして、原作も読みましたが、敢えてあの作品を映画化したシュナーベルを監督として尊敬します。おそらく、一作家として原作者に対する深い共感と愛情があったからできたことでしょう。
その深い思いが、音楽に至るまで徹底的にこだわったことが伺える一作そして一枚です。