RAILWAYS [レイルウェイズ] [Blu-ray]
冒頭のシーンがいい。電車が動き出すと、前方の窓から順番に1枚ずつ灯りがともるように車内に日光が差し込むシーンが、幻想的な美しさをともなって見る者を物語にいざなう。
住宅地から海岸沿い、そしてのどかな田園風景に敷かれた単線レールの上を走るクラシカルな電車が、郷愁と共に古いモノを大切にする気持ちを呼び起こします。
49歳にして、順調に歩んできたキャリアを捨てるのはどんな心境なのか。親友の死や母の介護が同時に重なり、メーカーに勤めながらモノづくりよりも経営に重きを置いてしまった社内での自分の立ち位置に嫌気がさしていたところに、さらに少年時代の思い出や娘や妻の本音を知るなど、多少理由付けはされます。しかし、辞表を提出するにあたっての苦悩や葛藤をほとんど描かない。そのあたりは、アッサリしていて潔いととるかドラマが希薄ととるかは難しいところですが、もう少し描いてもよかったかな。
運転席に座る肇の楽しそうな様子が心を和ませる。同じ線路の上を走っているのに、毎日が緊張感と刺激にあふれている。困っている客に手を貸したり、息子ほどの年代の同期入社の青年が抱える蹉跌に理解を示したりと、年の功を見せたりもする。そんな、真面目な好青年がそのまま歳を取ったような役柄を中井貴一が、はつらつと演じ、さすがに上手さをみせます。
RAILWAYS [レイルウェイズ] [DVD]
錦織監督の描く丁寧な描写と主演の中井貴一の確かな演技、光と影のコントラスト、時折差し込まれるイメージショットの適切さ、緩やかな時間の流れのなかで贅沢な2時間を満喫出来ます。