われ逝くもののごとく (講談社文芸文庫)
終戦後の庄内地方の地理や風俗、信仰などが方言をベースとした人間関係描写で記述され物語が進む。前半では話題展開の遅さと展開のしつこさを非常に感じ疲れた。後半は展開が早まり一気に読みたくなったが、「逝く」ことがキーワードであるものの展開の唐突さや不自然さを感じ続けた。最終章で標準語の語りで総括がなされる。読後感はひとそれぞれの違いが際立つ作品と言えそうだ。「月山」を先に読むことをお薦めする。
森敦との対話
森敦は「月山」の他はいくつかの文壇史を読んでいた。
それだけの知識でこの本を読み進めたが、途中息苦しくなった。「指導はするが一作も
書かない」森は「未だ」自分自身で小説を書くことに納得がいかなかったのだ。
傍目には陽気な妻と後に養女となった作者が森と接する日常が凄まじく、これ自体が
作り物のように感じた。果たして小説家とはこのようなものか。こんなにも己に書くことに
厳しくなれるものなのか。読んでいる最中、常に自問自答していた。
これから「月山」をもう一度読んでみようと思う。
美しく燃える森
CMでチラッと聞いてから、ず~と気になっていた曲でした。
奥田民生さんの声 こんなにエロティクだったけ?
スカの軽快なんだけど、なんかセツナイ楽曲がベストマッチです。
歌詞も意味深でよいです。
3曲目の「睡蓮の舟」も情念の嵐の後の午睡て感じがすごく良い。
だから、1番スカパラらしい2曲目は、なんか、私としてはちょつとなんですが、それで星4つになりました。
あ~もっと奥田民生さん聞いていたい。
月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)
本作品に描かれている生活様式は昭和30年代頃まで山奥の山村には残っていたようです。
今では見ることも経験することも出来ない日本の原風景が描かれており、それが読む者に新鮮な印象となって残る作品です。
作者は実際に舞台となった山村を取材して生活を共にしたものと思われますが、そこでの生活実態、情景、人物の描写には優れたものがあります。
しかしながら私には読み終えて少し不満の残る作品でした。
不満に思うのは主人公の存在感が希薄であることです。
何故、放浪の旅に出てこの山村で一冬過ごす事になったのか?何故、唐突に訪れてきた友人に誘われてこの地を去ったのか?----主人公の意識の流れ、即ち心情描写が少ないこともあり主体性が感じられない作品です。
安倍公房の「砂の女」、カフカの「城」を想起させる筋立てですが、これらの作品では主人公が不条理の世界に迷い込んだとは言え優れた心情描写により主人公の主体性が感じられました。
併録されている姉妹編「天沼」にも同じ印象を受けました。
情景描写は優れているのですが心情描写において伝わってくる物が少なかったのであえて評価を落とした次第です。