バッハ:ヴァイオリン・ソナタ集 BWV1014-1019
ドイツのヴァイオリニスト、フランク・ペーター・ツィンマーマン(Frank Peter Zimmermann 1965-)とイタリアのピアニスト、エンリコ・パーチェ(Enrico Pace 1967-)によるバッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750)のヴァイオリン・ソナタBWV.1014~1019の全6曲を収録。2008年の録音。
バッハのヴァイオリン・ソナタは、至上の名作「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の影に隠れて、その内容に比して聴かれる機会の少ない作品だと思う。実は、私も、これらの作品をきちんと聴く機会というのは、これまであまりなかった。しかし、私の場合その最大の理由の一つが、多くの録音において、伴奏が、ハープシコードやチェンバロ、あるいはフォルテ・ピアノによっているためである。私はピアノという楽器の表現力こそ、バッハの作品に相応しい、と常日頃考えているものなので、そのこともあって、これらの作品を聴く機会から遠ざかっていた。・・・中で、ポッジャー(Rachel Podger 1968-)によるものを聴いていたが、これもピノック(Trevor Pinnock 1946-)の伴奏はもちろんチェンバロだった。
実際、様々なカタログを探しても、ピアノ伴奏によるこれらの楽曲の録音は3つしか見つけられなかった。参考までにその3つを書くと、メニューイン(Yehudi Menuhin 1916-1999)/ケントナー(Louis Philip Kentner 1905-1987)盤、ラレード(Jaime Laredo 1941-)/グールド(Glenn Gould 1932-1982)盤、テネンバウム(Mela Tenenbaum 1946-)/キャップ(Richard Kapp 1936-2006)盤の3種である。特に、最近の録音でピアノによる伴奏での録音は皆無と言ってよかった!
しかし、そのような状況の中、干天に慈雨のように現れたのが当アルバムである。
ツィンマーマンのヴァイオリンの特徴は慎ましやかな美観と言える。つまり、そのスタイルは主張の強いものではない。以前、彼が弾いたモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集を聴いた時にも感じたものだが、作品そのものを聴くような、演奏者の「献身性」のようなものが体現されたような演奏だ。とは言っても、ただ漫然と弾いているということではなく、十分な技巧により、適切な音量と方向性を持って、音楽が自然な色合いに満ち、実に清々しく響くのである。それがバッハの音楽であるから、時として神々しいような荘厳さを湛え、聴く者をはっとさせるほどの深みに到達している。それは、バッハの音楽の特性そのものだと感じられる。
そして、ピアノ!。ピアノのパーチェも、素晴らしい感性を持った音楽家であることが示されている。ソナタ第6番ト長調は5つの楽章からなり、しかもその第3楽章がクラヴィーアのソロによっている点が特徴的だが、ここで、パーチェは軽妙な節回しで的確な音楽の流れを演出しており、楽曲に内在する音楽としての質を、過剰な力を用いずに掬い取る自然さがある。この巧妙さがツィンマーマンのヴァイオリンと抜群の相性を示した。第5番ヘ短調の緩徐楽章の「静謐な速さ」をたたえた叙情性の発露など、その効果の顕著なところではないだろうか。楽曲としては、やはり第1番のロ短調が傑作と言える内容だが、ここでもヴァイオリンとピアノによるその滋味豊かな響きは、厳かで毅然としたたたずまいを見せる。
この名演の出現に感謝しながら、ぜひ、おおくの音楽家による「ピアノによる」同曲集の録音を期待したい。
ベスト・クラシック100 2
私がクラシックを聴く!? というのは自分でも驚いていますが、
いや、なかなか良いものですよ、名曲というものは。
私が知っている曲といえば、
映画『地獄の黙示録』で使われていたワーグナーの「ワルキューレの騎行」くらいですが、
今までクラシックを聴かなかった方も、
100曲も聴いていれば私のように好き(?)になるかも知れません。
好きというか、何かをする際のバックミュージックに使えるのではないかと。
心休まるかどうかは人それぞれだと思います。
まぁ、試してみても損はない曲数ではあるでしょう。
あぁそれと、個人的にはDISC1に入っていた、
『火星〜戦争の神(組曲「惑星より」)』がかなりお気に入り。
これ、映画音楽じゃないの!? と思えるような曲調です。
マタニティ・モーツァルト
このオムニバス盤、一流の演奏家の演奏のいいどころどりで、なかなか侮れない仕上がりになっています。つまり胎児や赤ちゃんに縁のない人が聴いても、モーツァルトの音楽の天国的な美しさに心癒されます。
ひょっとすると、最強のモーツァルト、いやクラシック入門盤かもしれません。クラシック音楽に敷居の高さを感じている人には特にお薦めです。