Wの悲劇 DVD-BOX
このドラマ、私は若村麻由美さん目当てで観てました。 が、主役の武井咲ちゃんの一人二役が素晴らしかったです。 確かに昼ドラっぽい雰囲気で、ツッコミ所も多少ありましたが、ストーリーはなかなかよく出来てたし、キャストもハマっててバランスが取れていたので、最近の若手主流のキャストの豪華さだけの中身のないドラマより全然楽しめました。 若村麻由美さんの演技力や美しさ、色っぽさはかなりグッときました。 桐谷健太さんはカッコいいし、高橋一生さんもgood。 久々に次回が気になるくらいドキドキした面白いドラマでした。 私は映画の方は未見なので、映画版を知らない人の方が楽しめるかも。
腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
著者は推理小説作家だが、名前は知っていたものの小説は読んだことがなかった。
これは小説ではなく、原因不明の腰痛におそわれ、治癒するまでの闘病記である。
発症し、手当たり次第に効果のありそうな治療法を試し、どれも功を奏せず、絶望的になっていく3年間が前半分。
経済的には恵まれているとはいえ、日常生活もままならない腰痛におそわれ、苦しみぬく記録である。
編集者など、広い情報網を持つ知人が多く、とにかく次々に試しては失望する。
心因性のものだろうと言われるようになったところで、ついに、心身症として治療してくれる医師に出会うのだが、名医と呼ばれるひとが次々に実名で出てくる。第3章のタイトル通り「世に腰痛者と名医は多い」のである。
何しろ、!器質的疾患ではないのだから、腰痛を治す名医では治せないのだ。
自分自身の内面にある原因と向き合い、治癒していくのだが、治療法に不信感を抱いた時のこともそのまま正直に書いてある。
書名の「椅子がこわい」は、文字通り、椅子に腰をかけていると痛みだすということなのだが、実は、椅子に腰掛けることによって引き出される潜在意識がこわいのである。
文章は読みやすい。医学用語なのか、「増悪《ぞうあく》」という語が頻出するのが目をひいた。
心療内科を訪ねて―心が痛み、心が治す (新潮文庫)
『Wの悲劇』の著者が自身のひどい腰痛に苦しみ
整形外科、整体、民間療法、あらゆる治療を試み
最後にたどり着いた心療内科で救われたと言う体験
に始まります。
ここに登場する事例は、病気の症例であると同時に
物語風に描いていて短編小説のように読めます。
以前読んだ『診察室にきた赤ずきん』は、医者の目線で
心療内科に来た患者を見ていたものですが、
この本は、心療内科の患者に取材して描いたことにより
より切迫した内容になっています。
潰瘍性大腸炎、醜形障害・顎関節症、高血圧、拒食・過食、
肛門痛、毛髪脱毛症、喘息、等さまざまな病気が
成長期や青年期の心のキズを原因として、思いもよらない
病気として現れ、主人公を苦しめます。
私は、この本を読んで、自分の膝が痛いのも心身症
ではないかと疑いたくなりました。
裁判百年史ものがたり (文春文庫)
「ものがたり」と題してあるのが納得できます。
それは単なるドキュメンタリーにはなっていず、楽しい「読み物」になっているからです。
内容としては、様々な十二の裁判が選ばれています。
それはいずれも歴史的にエポックメイキングな裁判ばかりで、作者の意図が十分に伝わってきます。
その中でも、「大津事件」と「翼賛選挙」の2章には感動しました。
権力機構からの様々な圧力に屈せず、「司法の独立」を貫いた二人の裁判官の気概に打たれたのです。
その対極として「大逆事件」が取り上げられており、その他にも死刑の基準を作った「永山事件」、猥褻の基準が問題となった「チャタレー裁判」や「離婚」の基準となった裁判も取り上げられていますし、「尊属殺人」も扱っています。
更には、終戦直後の憲法の狭間の時期に起きた「帝銀事件」「松川事件」「八海事件」と言った、「自白」の問題が浮き彫りになった事件も取り上げられています。
いずれも名前は知っている事件なのですが、裁判記録を丁寧に読んで書かれた「読み物」は、実に読みやすく楽しい作品になっていました。
伊坂幸太郎選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎005 (講談社文庫)
「謎」シリーズの第5弾だが、これまで謎解きミステリらしいアンソロジーと感じた事はなく、期待外れの物が続いていた。今回のブレンダーの伊坂氏に期待したが...。
陳舜臣氏「長い話」は、単にあるエピソードを綴っただけでミステリとは思えない。今邑彩氏「盗まれて」も底が浅過ぎて、謎の気配が感じられない。泡坂妻夫氏「飯鉢山山腹」は亜愛一郎もの。ユーモアたっぷりの記述とトリックの組み合わせの妙が光る。大トリックではないのに読者を煙に巻く手腕は流石と言える。夏樹静子氏「パスポートの秘密」は平凡な構想で、話の発端から結末まで偶然とヒロインの想像だけで成り立っている心許ない作品。真保裕一氏「私に向かない職業」は、題名もパロディ、内容もハードボイルドのパロディだが、トボケタ味で中々読ませる。鈴木輝一郎氏「めんどうみてあげるね」は、良くあるテーマとも言えるが、語り口の上手さで無難な出来か。連城三紀彦氏「夜の二乗」は既読だったが改めて感心した。男女の心理の翳の描写、着想外のトリック、巧妙なプロットの三拍子揃った秀作。本作レベルの短編を揃えて貰えれば購入した甲斐があると言うものだが...。小松左京氏「長い部屋」は、専門のSF的手法をユーモア・ハードボイルドと融合させたものだが、脱力感しか覚えさせない内容。
「夜の二乗」を除くと、読み応えのあるミステリ・アンソロジーとは到底思えなかった。この辺で企画を見直しても良い時期なのではないか。