タソガレ
「相貌失認」って言葉も知らなければ、その障害の存在も大変さもまったく知りませんでした。
相貌失認であるせいでの苦労や危険さが丁寧に書かれていて、とても勉強になりました。
連作短編なのですが、毎回の趣向がかなり凝っていて、それが恋愛初期の微笑ましいような爽やかなストーリーと相まって、素晴らしい作品になっていると思いました。
三代目沢村田之助―歌舞伎はともだち 3 (夜想EX (3))
とっても楽しい本です。素晴らしい。
江戸幕末に咲き誇った澤村田之助という大輪の花。
彼の生涯や、田之助の生きた江戸の歌舞伎界が当時の文献やら役者絵やら小説やら当代の紀伊國屋のお話やら、様々な手法によってとても面白く魅力的に映し出されています。
歌舞伎好きの方だけでなく、江戸の文化や風俗に興味がある方にもおすすめです。
当時入ってきたばかりの写真に写し出される江戸の芝居小屋や役者や彼らを取り巻く人々の姿が見られるのも興味深い。
本人の写真と役者絵を見比べてみるのも面白いですよ。
ただ、せっかく美しい田之助の役者絵が沢山掲載されているのに、白黒写真なのが少し残念でした。
表紙のようにカラーにしていただきたかったです。
21世紀への遺産 日本伝統音楽(5)歌舞伎
「声に出してよみたい日本語」(齋藤孝 著)が先年、ベストセラーになった。自分で声を出して読むのも気持ちよいが、歌舞伎のセリフはやっぱり本業の歌舞伎役者、それも名優のセリフ廻しを聴くに限る。
本CD中の「勧進帳~山伏問答」では、生涯に1600回も弁慶をつとめたという七代目松本幸四郎(今の染五郎、松たか子の曽祖父!)の弁慶、江戸前のすっきりとした美貌でも有名な十五代目市村羽左衛門の富樫の激しいぶつかり合いは、声しか聴けないはずの私にもその舞台姿を想像させる。
そのほか「声に出して読みたい日本語」にも採りあげられた「知らざぁ言って聞かせやしょう」で有名な弁天小僧のセリフや三人吉三の大川端の場の名場面のセリフは、聴いているだけでも耳に心地よい。
歌舞伎入門者には是非お勧めであるのはもちろん日本語の面白さを味わえる「古くて新しい」贅沢な一枚である。
眠狂四郎 殺法帖 [DVD]
シリーズ第一作。残念ながら全体的に映画の造り込みが浅く
「眠狂四郎」というキャラクターがどのようなものなのか今ひとつ伝わってこない。
いつもは流れるような演出の田中徳三監督であるが、この作品では
脚本の散漫さに影響されたのかぎこちない部分が目立つ。
牧浦地志のカメラによる映像は奇麗だし、
共演の中村玉緒の演技が雷蔵以上に迫力があるところは良。