鐵のある風景―日本刀をいつくしむ男たち
金を失う「鉄」ではなく、金の王なる哉「鐵」(流星刀の女たち)の魅力に溢れた本。骨董というと一般には陶芸を中心に語られます。(青山二郎、小林秀雄、白州正子など)ところが、森氏は、「正直いって、僕は焼き物には格別の興味はない。他の美術工芸品に比べて、評価の基準がうさんくさい。」(P142)と言い切っています。確かに国宝にもなっている井戸茶碗が未だに朝鮮の雑器か、朝鮮の祭器かはっきりしていない。(実ははっきりして自分の無知かもしれません。誰か御教授ください。)
「職方たちとつきあって、教えられたのは、貧乏でも人生は楽しむことができる、ということだ。本書で、せめてその楽しさだけでも伝わるだろうか。」(P219) はい、伝わりますよ。お金に余裕がある人は、本屋に急げ。
推理小説常習犯―ミステリー作家への13階段+おまけ (講談社プラスアルファ文庫)
森雅裕氏のように江戸川乱歩賞のような大きな賞を受賞したから
といっても簡単には推理作家としては生活できないということが
リアルに分かります。
私憤を晴らしているというよりも出版業界の実体に戦慄する本です。
小説では筒井康隆氏の「大いなる助走」や小林信彦氏の
「悪魔の下回り」がありますが、ミステリー作家へのガイドという
体裁をとりながら、ある種のノンフィクションだと思います。
出版業界というのはドロドロの恐ろしい人間関係があるのですね。
村上春樹氏が外国で生活したり、文壇と関わらないという姿勢を
とっているのもうなづけますが、ベストセラー作家でないと
そういう姿勢さえもとれないようです。
作家になりたいという人は多いと聞きますが、この本を読まれて
一度考えてからでも遅くはないと思います。
化粧槍とんぼ切り
ほとんどの方が本多平八郎忠勝と聞いても誰?と、 言う返事が返ってきそうですが、徳川家康はご存知 ですよね。その家康公の天下統一のために全身全霊 を打ち込んだ「本多中務大輔平八郎忠勝」は、“徳 川四天王”“徳川十六神将”とうたわれた猛将なの です。武田軍の落首に「家康に過ぎたるものが二つ あり 唐の頭に 本多平八」とありますが、その生涯
57度の合戦において切り傷一つ負わなかった槍術 の達人でした。ご愛用の名槍の号は「とんぽ切り」 と言われ、とんぼが槍先にとまったとたんにヒラリ と二つに切れてしまうほど切れ味が鋭かったそうで す。この名槍「とんぼ切り」が一つのキーワードに なって繰り広げられるこの時代小説は、秋の夜長を 幻想的に過ごさせてくれます。本多忠勝公ファンは
無論の事、歴史好きな方には特にお勧めしたい一冊 です。読み終わって、白檀のお香を焚いている貴方 の姿が見えるようです。
高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-
あの超売れっ子作家の「東野圭吾」さんと「江戸川乱歩賞」を同時受賞したし、自主出版以来10年振りの商業出版と元々作品の評価が高かった作家が極貧生活を続けついに「コンビニ」で働くというすごいインパクトで思わず手に取った本です。
客単価が小さい割にクレーマーといわれる客に理不尽なまでに罵倒される姿は(森さんは負けていませんけれど)身近にいくらでもある「コンビニ」どこにでもある光景なんだろうなと思わされます。
ただ、森さん自身の「性格」もあり「生きにくい人生」を送っていらっしゃるなぁ・・・。読んでいるこちら側の心ががドーンと重くなってしまうような気分にもなりますが元々の賢さとユーモアも持ち合わせている森さんの作品です読んで損は絶対ありません!!
この「作品」がもっともっと多くの方に届くようにお祈りしたい気持ちです。