ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 (中公文庫)
ルーマニアの首都ブカレストのマンホールに住む子供たちの姿を1年以上に渡って取材したルポルタージュ。著者はこの取材のためにルーマニアに移住し、ルーマニア語を身に付けたという。
実際にマンホールに潜り、著者は子供たちと関係を築いていく。通訳なしでのルーマニア語による取材だったから、子供たちが心を開いてくれるようになる。その過程が瑞々しい文章で描かれていて感動的である。
特筆すべきはその取材力だけではなく、その卓越した表現力である。新聞記事のような平たい文章が多い海外ルポものの氾濫の中で、この作品はまるで一流の小説家が描いたような豊富な語彙と名文によって生き生きと綴られている。
近年の海外ルポ群の中において、この作品が名作であることを私は疑わない。