Made in England (Reis) (Dlx)
'72年発表。
ディープ・パープルのようなハード&ヘヴィなオルガン主体の音で好評を博しシングルヒットも有りながら現状に満足する事なくリーダーのヴィンセント・クレインは前作で専任Voのピーター・フィンチという新たな血を導入する。が、クレインの指向する黒っぽいファンキーな音楽性はバンド内の分裂を生み、クレイン以外のメンバーは脱退してしまう。失意に沈む間もなくクレインが新たに獲得したのはブリティッシュ・ロックの重鎮的ボーカリストのクリス・ファーロウだった。ファーロウもまた黒っぽいVoであり、バンドの音楽性はよりファンキーになりながらも(2)のようなシングル・ヒットも狙えるような楽曲もありアトミック・ルースターとしての個性は失われてない。とはいえバンドの音が壊れそうなくらいに熱唱するファーロウの声とそれによって生まれる独特の緊張感が本作の魅力である。
In Hearing of (Reis) (Dlx)
1971年に出たアトミック・ルースターのサード・アルバム。
前作ほど、ヘヴィでおどろおどろしい雰囲気はなくなり、カラっとした乾いた感じの音です。僕はこのアルバムからルースターを聞き始めましたが、これほどキーボードが前面に出るハードロック(+プログレ少々)はあまりないのではないでしょうか?
(1)Breakthroughではピアノが暴れまくり!「ハードロック=ギター」という固定概念を覆します。前作で荒々しいギター(これがすごくかっこいい!)を弾きまくったジョン・カンがこの曲ではしっかりとバッキングに徹している。(2、6ではいつもの元気なジョンが聴ける)
(3)Decision/Indecisionはキーボードとドラムだけのシンプルなバラード。
ジャジーな(5)やファンクな(8)、インストの(4)、(7)。このあたりは人によって評価は大きく異なると思う。ヴィンセントはこんな音楽がやりたかったんだな・・・。
ボーナストラック(9)はピート・フレンチが歌っているUS番Devil's Answer。
(10)、(11)はクリス・ファーロウ在籍時のライヴです。
アルバム発表時、ジョンとポール・ハモンドはすでに脱退しており、ピート・フランチも間もなく脱退してしまったため、このメンバーで聴ける唯一の音源です。このメンバーで続いていたなら・・と惜しまれてならないほどの良盤だと思う。とくにピート・フレンチのドスのきいた力強いヴォーカルは乾いたサウンドに緊迫感を与えている。
余談になりますが、2007年leaf houndの再結成により久し振りに音楽シーンに帰ってきたピート。2008年のnewアルバムの中には、「Breakthrough」(!)のカヴァー!歌っているのは、もちろんピート!!ルースターのファンの方は是非そちらも御一聴してほしい。(MySpaceで聴けます!)
短く終わらせるつもりが、ついつい長くなっちゃいました・・・
※追記
2011年9月21日
R.I.P John Du Cann.........
Nice N Greasy
Atomic Rooster再結成以前のラストアルバム。オリジナルメンバーは、KBでリーダーのVincent Craneのみになっている。R&Bやソウルの要素を取り入れた本作はハードロックファンにはウケがイマイチだが、独特のブリティッシュっぽさは失われていない。特筆すべきはChris Farloweのソウルフルなボーカルと、このアルバムのみ参加のJohn "Mandela" Goodsallの驚異的なギターなのだが、共にこのバンドの持つ初期のカラーとは方向が大きく異なるためか、従来のサウンドを求めるファンからは好意的に受け入れられず、充分な評価を得ていない気がする。
フロム・ザ・ビギニング(DVD付)
ELPとしては2種目のボックスセット。前作「リターン・オブ・ザ・マンティコア」は再結成を記念しての作品だったので、未発表音源も3曲あったが、その価値を高めたのは「新録曲」の数々だったと思う。対して本作は2007年に彼らの母国イギリスで発売されたものを、拘りの日本らしく「結成40周年記念」と銘打って、1夜限りの再結成の興奮冷めやらぬこの時期に発売した、真の意味での「回顧録」とでもいうべき総集編を目指した作品といえる。
前作ボックスで新録により収められていたELP結成前に在籍していたバンドの音源も、見事にオリジナル(クリムゾンやナイス等)を収録。未発表音源として、これまで断片的に発表されてきた1972年プエルトリコでの「マ・イ・ソル」フェス出演時の演奏がフルに初登場している。あまりの高湿度でムーグの制御キースが苦労したという伝説の公演の全貌を初めて耳にした感想は「凄い」の一言。出しの「ホウダウン」から3人が激走する様は、既発の様々なライブ音源と比肩する素晴らしい出来。音も「レディース・アンド・ジェントルメン」の痩せた音に比べ、(分離が良すぎる気もするが)骨太でロック的な醍醐味に満ちていて、カッコ良い。
全キャリアを総括する選曲もまずまずだし、ミックス違いやアーリー・テイクなどの貴重音源も含まれるのも良心的。
なにより、前作ボックスに比べ美麗な化粧箱もなかなかだ。
唯一、星を減じたのはDVD。既発の「マンティコア・スペシャル」を付けた意味はなんだ?という感じ。付加価値は日本語字幕が全編に着いたという事だけ。映像もリストアされてないボケボケのままだし、、こんなものを付ける意味が無いと思う。映像集としては決定版といってよい「ビヨンド・ザ・ビギニング」が出ているんだし、映像がシンドイのであれば、音に徹底して拘って(未発表ライヴやデモテイク等で)ディスク1枚作っても良かっただろうし、無理ならディスク枚数を増やさず、価格面も据え置いてくれたって良かった。