昭和少年図鑑
峰岸達がこれまで書きためたイラストのなかから、昭和20~30年代のものを集めて、短い文章をつけている。アの「アイスキャンデー屋」からはじまり、最後は「輪まわし」で終わる。そういえばこんなものがあったなあ、というようなものが一つや二つ、かならず見つかるだろう。変わったところでは、「ワイシャツの袖まくり」「日本ビクターの犬」「垂らし手ぬぐい」「カラスウリ」「学帽のカバー」「土管」といったものがある。当時はめずらしくもなんともなかったものが、こんなふうに絵になるとふしぎな味わいがある。
空間も時間も、今よりもっと隙間があったことがわかる。描かれた少年や少女の目は、どれも迷うことなく対象を見すえている。写真にはない、絵だからこそ伝わるメッセージといったものを考えてみたくなる。ねじめ正一がエッセイを寄せているが、注意深い人なら、この二人の育った場所(高崎対高円寺)や時代(年齢にして四歳の違い)の差を、その文章から感じ取るかもしれない。もしそうなら、あなたは確実に昭和の少年・少女です。