咎狩白 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
サンデーで連載している時から大好きな漫画でした。
連載時はいつも後ろの方に配置されていたので捜すのは簡単でしたが、いつ連載が終わるのかとヒヤヒヤしながら読んでいたのを思い出します。
明らかに打ち切りな終わり方な上にこれからが面白くなりそうな展開だったので、とてもがっかりしていましたが復活させてくれた事に感謝です。
それにしても「EVIL HEART」(こちらも推奨)の作者といい、作品を完結させようというプロ意識に頭が下がります。
ただ、ストーリーや設定はシンプルだけど、本作に至るまでの主人公の変化がテーマになっているだけに、どんなに設定を追加してもご新規さんを引き入れるのは難しい気もします。
サンデー時代の「トガリ」を好きだった人の要望に応えた作品なので個人的には星5つですが、ご新規さんがこれを読んでも星3つぐらいかも知れません・・・。
既にサンデー時代の単行本を持っている私には不要ですが、再販しても良いのでは?
その方が、今作をもっと楽しく読めると思います。
トガリ③ (MFコミックス フラッパーシリーズ)
トガリ新装版3巻です、旧版の単行本の5巻の表紙イラストが収録されています、自分だけの世界の帝王といった攻撃的なオーラを放つ秀逸なイラストです。
この巻は、旧版の単行本の5巻・6巻の話が丸々収録されています、exのWISHを撃破したところまでの収録となります。
咎を操る罪人たちとの戦いが本格的になり、アクション性の向上に拍車がかかっています。
今回の書き下ろしは沢崎が新米だった頃に初めていつきと会った一場面です、本編ではなかなか見ることのできない心温まる和やかなエピソードです。
恒例の夏目先生の作品解説もじっくり読みましょう。
トガリ (1) (少年サンデーコミックス)
生きている間、人を殺し続け、地獄におとされた少年の話です。
罪を犯した死者達を改心させるため、繰り返される拷問。それでもねを上げる事のない主人公。
そんな彼に、「地上で108日間で108つの咎を集める事ができれば、地獄からの開放を」約束する地獄の司令官。
生きる為に命を奪い、地獄から脱出をかけて咎を奪う。
ありがとうの意味、奪う事と貰う事の違い。
彼はそれを知りどう変化していくのか…。
小難しすぎず、かといって矛盾を全て放り出すでもなく、テンポよく読める作品だと思いました。
咎狩 白 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
週刊少年サンデーでの未完のままでの連載終了、そしてコミックフラッパーでの連載再開を経て、高まりに高まり続けたこのトガリ完結編も遂に連載終了、見事なまでの大団円でした。
白い闇こと瀬奈と対峙し、最後の罪を巡っての闘いが始まりましたが、これまでのようにただ敵を倒せば万事解決といった単純なものではなく、人間の力とは、罪とは、愛とは何なのかを激闘の中で見出していった統兵衛の葛藤が印象的でした、地獄から出てきたばかりの頃では考えられないほどの成長ぶりです。
統兵衛だけでなく、自らが歩むべき道を求めて画策し続けてきた瀬奈、瀬奈に殺された父親を捜し続けて来たいつき、それと目的を同じくする沢渡、皆が追い求めてきたものがこの日、この場所で見つかるのだった・・・
瀬奈の暴走のために倒れたいつきを救うために統兵衛が取った選択は・・・
・・・一人の極悪人が地上も地獄も天界も巻き込んだ108の罪を巡る闘いもこれにて完結、何年も何年もこの作品の完結を望んできたので、この作品が再開したときは本当に嬉しかったです、しかもその面白さはサンデー掲載時に劣ることなく輝きを増していました、この一年半は咎狩白が読めて本当に楽しかったです。
この作品をはじめに企画してくれた週刊少年サンデー編集部、再開を許してくれたコミックフラッパー編集部、そしてトガリを描き遂げた夏目義徳先生にこの言葉を伝えたい、
「アリガトウ」と。
あやかしがたり (ガガガ文庫 わ 3-1)
惜しい、の一言に尽きます。
時代物、妖怪物の雰囲気を持ちながら、実際はそことは違う部分に意図を置かれている作品だと思います。
読み手によって非常に評価が分かれてしまうのではないでしょうか。
時代物好きからすると時代考証が今一つしっかりしておらず具体描写に欠けます。会話表現でも首をひねる向きがあるやもしれません。
一方で時代物に触れた経験が少ない若年層にとっては、敷居が低くつっかかることなく読めるはずです。
特に時代物特有の言い回し、語句というのが目立たないあたり、作者個人の筆力で雰囲気が出せています。
良質な時代物を読んできた身としては判断に迷う部分でもありますが・・・。
また、妖怪についても既存の妖怪像からやや外した部分に設定を作っているあたりも悩ましい。
とはいえ、定義から練りこんだものなので違和感はありません。よりカジュアルで少年漫画的な妖怪になっています。
そうした部分を気にしなければ、物語の根底に流れるテーマ性が見え、感情移入もできると思います。
読むにつけ、アウトサイダーへの鎮魂歌という側面が見えてきて、純粋なエンタテイメント作品として成立していることがわかります。
何よりそれを支える作者の筆力に驚かされました。これで21歳?とは。
剣劇の部分やうなぎのくだり、たぬきのくだりなどは緩急のつけ方が上手です。
伏線も気持ちよく回収されます。反面、地の文が走りすぎかなとは思いますが。
加えて、作者のブログやツイッターとの落差にも驚かされました。そこに惹かれて読んだら、読み込んでしまいました。
ブログやツイッターの調子が愉快なのでコメディ調のものかと最初思いました。
ひとえに、言葉を選ぶセンスが備わっているのかと思います。
あとは、イラストでしょうか。商業的には損をしていると思います。
せめて電撃の某時代劇くらい、とっつきやすいものだったらと思ってしまいます。
ここも惜しい。
いろいろ含めて一昔前の少年漫画が好きな方は読んで損のない作品だと思います。
年齢とイラストの残念さを考慮して、★4