小説 経済産業省
二階前経済産業大臣を中心とした同省の幹部たちの活躍を紹介した,小説と言うよりレポート。わが国の経済参謀本部として機能してきた経済産業省(旧通産省)が,90年代以後,その存在意義を問われていたが,現在,経済成長戦略を企画・立案することで活路を見出そうとする姿が生き生きと描かれている。
エネルギー新産業創造―自動車に次ぐ巨大ビジネスが生まれる
いままさに太陽光発電ブームの様相であるが、それだけではない様々なエネルギー産業創生に向けた課題について、技術力&市場性の分析から分り易く整理してある。本書が扱うのはエネルギー産業分野ではあるが、実は日本のあらゆる「モノづくり」が直面している課題として、日本の(相対的な)強みは何で、これから日本は「何を売って食べていくのか」という課題に対する考察である。
EUに風力は売れるし、中東には太陽熱は売れるといったニーズ・需要だけでなく、日本が得意とする/これからすべき再エネ分野は何かについて考える材料を体系的に示す。エネ庁の調査研究ベースだけあり、データが豊富で技術的解説もわかりやすい。(いい意味で興味のない所を読み飛ばしやすい)。
政策を起点に『次世代の産業』の創出は最重要課題であり、特に『どこで勝つか』が重要になる。本書においては技術的優位性を軸に考察がされており、“そうはいっても”日本の「モノづくりに」期待する姿勢が強く感じられ、各産業分野における強み・弱みはあるものの、部品~EPC~組立~周辺機器など、産業の「すそ野」は広く、ターゲット分野のてクラスター集積化は期待したい。
しかし読み進むにつれて、、個人的な所感として、日本が生き残るためには、太陽光や風力といった「産業分野の選択」ではなく、日本の『きめ細やか』で『思いやり』と『おもてなし』、そして『かゆい所に手が届く』といった本質的特質(強み)に立脚すべきであり、最終的にはバリューチェーンにおけるO&Mなのではないかと感じた。また技術的に「強みがある」と分析されている項目についても、それが製品技術である限り「本当にそうなのか?」との不安や不信を感じてしまった。
もちろん「モノからコト」やITでIBMがHWを捨てSolutionに走ったように、はたまた酉島ポンプがO&Mおよび人材育成、稼働保証で中東で成功したように、一つの明確な方向性はあるものの、水道局/電力/通信キャリアの強固なサービス力依存し、メーカーはO&M力をこれからどう磨いていくかはまだまだ課題があるだろう。
国内シェアさえないサービスが海外でコンピートできるのかとも思うし、Smileカーブの左端に頼るのではなく、右端の製品企画やPackagingの産業創生は、今までの経験を超えて、分りやすい所に逃げない、慣れない・自信のない所に政策的に一歩踏み込んだ戦略展開が重要であり、理想と実現の距離が埋まっておらず、そこにさらなる行政官およびコンサルタントの知見を期待したい。
その意味で、本書の残念な点として、ファイナンスの章があるものの浅目。これからのTotal Packagingにおいては、製品力だけでなくファイナンスを絡めたビジネスモデル/スキーム力の構築が重要な競争領域となるだろう。また、タイトルの「エネルギー新産業」は広く、再エネや スマートシティなど 含まれ全体で意識している「エネ新産業」のユニバースがわからなかった。(エネ庁Prjの都合だと思われる)。再エネとして捉えるならば、地熱・水力は考察はもっと欲しかったし、また「日本が戦う武器の選択肢」として広く捉える場合は、EVも重要な商材オプションと考える(のでページを割いて欲しかった)。
それ以外の太陽光、太陽熱等、風力等のカバーしている産業分野は大量の情報・分析がコンパクトに纏まっています