野獣死すべし [DVD]
ラストの大破綻が口惜しいものの、全編を醸し出す異様な緊迫感と、大都会の静寂にひっそりと佇む狂気を活写させた、村川透(監督)、丸山昇一(脚本)、仙元誠三(撮影)、松田優作(主演)の“遊戯”シリーズの最強カルテットによる、角川映画屈指のカルトな傑作。俯瞰のワン・カットでの青木義明と優作との雨中の死闘から、カジノ・バーでの現金強奪(真っ先に射殺されるのは、GUNマニアでテクニカル・アドバイザーのトビー門口)へと続く魅惑のオープニング・シークエンス、自慰行為で絶叫する女性を眺めながら、平然と朔太郎を暗誦する優作の冷たい眼差し、雷鳴轟く中、踊り続けられる根岸季衣のフラメンコ、そして、列車内での優作と室田日出男による、文字通り手に汗握る息詰まる対決と、観念的で、ナルシスチックなまでに研ぎ澄まされたその映像感覚は、今、見直しても、かなりイケテマス。大藪春彦の原作を、今日風に大胆にアレンジした丸山昇一の脚本が見事で、確か、公開時のパンフに記載されていた、丸山創作による“伊達邦彦の経歴書”が大層面白く、映画を観る上で参考になった気がする。今回の廉価版に、出来る事なら、是非とも添付して戴きたい資料だが、著作権の関係で無理だろうな。劇中、伊達の東大時代の同窓会に登場する友人たちの面々に、岩城コウイチ、阿藤海、林ゆたか、風間杜夫ら。どう見ても、頭良さそうに見えない(失礼!)のが笑える。
NHK大河ドラマ 秀吉 完全版 第弐集 [DVD]
後編早々に、後編の山場である「本能寺の変」があります。
そしてそれを頂点に、秀吉が人生の下り坂を転げ落ちていく様がじっくりと描かれています。
前編で秀吉の出世を支えていた周囲の人の誰かが、毎回、戦(いくさ)や病気などで姿を消していきます。
大河ドラマ「秀吉」のファンならば、心痛の場面が連続して、見ていると胸が苦しくなります。
しかし、このドラマは最後まで見てこそ価値がありました。
それは、人生における人との出会いや別れ。
また、人の上に立つことの孤独さや、贅沢をすることで味わう虚無感。
後編でそれらを垣間みて、秀吉がすべてを手にして“満たされた”老いし後編よりも、
“満たされていなかった”若かりし前編の方が、実は幸せだったのではないか、と感じさせられるからです。
これは「秀吉」だけではなく、現代人にも当てはまる人生の定理なのではないでしょうか。
大河ドラマならではの「人の一生」について、考えずにはいられない超大作でした。
KEIGO III~歌うように話せたら
アルバムタイトルとなっている「歌うように話せたら」は名曲。
仲代圭吾・行代美都の両氏はTVではなく、コンサート中心に活動をしている
シャンソン歌手だが、シャンソンだけではなく、オリジナルや世界の名曲もコンサートに取り入れている。
CDには、オリジナル・シャンソンが中心となるが、彼らの良さは、実際のコンサートの方がよく伝わる。
なんと言ってもMCが最高なのだ。
また、実兄仲代達矢氏の詩の朗読がいい。
情景が目に浮かび実にいい。
コンサートでは、達矢氏がマイクを持ち、シャンソンを歌う。これもまた見物である。
<東映オールスターキャンペーン>二百三高地 [DVD]
すみません、作品評価は既に他の方々が(旧発売版で)すばらしいレビューを
されていますので、「二百三高地」という映像作品が好きだ、という方には
興味深く聞いて頂けるのではないか、と思われる話を一点申し上げます。
本作品の中軸となる第九師団第七連隊の「古賀小隊」は実在のモデルが居た事を
ご存知でしょうか?
脚本担当の名ライター笠原和夫氏は、かなり仔細に事実の発掘やインタビューを
積み重ねた上で、本作を書かれた模様です。
私は中学時代を金沢で過ごしたのですが、二百三高地劇場公開〜TV版本放送の
1980〜81年当時、通っていた中学校の、ある定年間近の男性教諭が、
「米川二等卒のモデルは、俺のお祖父さんだ。俺の親父はその息子だった。」
「親父も叔母(つまりは妹さん)も本当に苦労して育った、と聞いている」
「親父は亡くなったが、叔母(つまりは妹さん)は高齢だが、まだまだ元気だ」
と授業中に話してくれたのを覚えています。
米川二等卒は劇中、戦死されますが、残された二人のお子様はがんばって元気で
成人された事実。
その事を知った上で映画&TV版を見ると、悲しい(勿論感動はしましたが)物語の中でも、
僅かながら、救われる思いがします。
また当時の劇場販売用パンフレットを見ると、日露戦争当時、(後に連合軍最高司令官となる)
マッカーサーが米陸軍少尉として金沢に居た、との事も書かれています。
日露戦争を描いた映像作品では、この「二百三高地」、新東宝の「明治天皇と日露大戦争」
は非常に優れた作品であると思います。
本作を未見の方は、今回の廉価版発売を機会に、ぜひ一度、ご覧になってはいかがでしょうか?