ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)
「ハンニバル」でハンニバルの出生について、少しえがかれていたので、読んだ方は取っ付きやす
いかもしれません。とっつきやすいだけで、妹ミーシャと家族の死、そして戦争と
ケダモノ以下の人々に蹂躙されたハンニバルの運命、これらは読むに耐えないですね。
でも、戦時下の悲惨な状況をおもえば、あったかもしれないとおもわれますね。
地獄というのはこの世のことでしょう。考えてみるとハンニバルがまっとうで、耳を塞いで
自分だけは安全地帯にいようとしている大半の人間がおかしいのかもしれません。
自分だけがたすかろう、という心理をよくかんがえれば、とても冷酷だと
おもいます。極論すれば、自分がたすかれば、他人はどうなろうといい、というのは
自分が生きるために子供を食べるケダモノとなにがどうちがうの?大してちがわないのでは?
とおもいます。
叔父にひきとられたハンニバルが少しずつ立ち直っていくのは読んでいてうれしく、ハンニバル
がとてもいとおしく感じられますね。
ところで、文庫本のカバー、裏表紙の裏に”所詮”とあるのですが、笑っていいのでしょうか?
羊たちの沈黙 (特別編) [DVD]
FBI訓練生クラリスがレクター博士に合う場面。
レクターが立って彼女を迎えているのに驚いた。彼女を見て立ち上がったのではない。
初めからわかっていたの!?エスパー!?(後に音声解説で納得。)
最初から全力全開で博士の恐ろしさを堪能させてくれます。
この後の質疑応答の場面も博士のいかれぶりが素晴らしい。いかれぶりと書きましたが、
IQはずば抜けて高いのですが、使う方向が邪悪です。
博士はそんな人なんだなあと思いました。
事件の犯人もかなりのサイコっぷりを見せてくれます。
最初見たときは小学生でよく分からなかった。怖いというからなんだよと思いましたが、
しかし、分かるほど賢くなくて良かった。
分かったらあまりのおぞましさに夜寝られず、人間不信に陥り、
精神的にいびつな青年になっていたかもしれません。って言いすぎかもしれませんが。
レクターの異常性、クラリスのまっすぐさが渾然一体となって
ものすごいきらめきを放つ映画になっています。
とはいえ、精神的に来る映画です。見る人を選ぶでしょうが、
この演技力、演出、脚本、編集は見事。17年たった今でも充分見れます。
ジャック・ソード 選ばれし勇者 [DVD]
○良い点
照明、撮影、音楽は一級品。
キャストもチョッキー・カリョなど面白い顔ぶれが揃っており、
中でも注目すべきは、主人公の少年時代を演じるレオ・ルグラン君。
ものすごい美形です。
●悪い点
各シーンがいちいちゆっくり進むので、ダラけてしまいます。
丁寧な作りだというのはわかりますが…
◎総評
いわゆる仇討ちものなのですが、
アクションは二の次で、史劇ロマンスに近い感じ。
恋人とは別に、主人公を愛するもう一人の女性がいるのですが、
彼女の存在感が実に可憐で、観て良かったなと思いました。
ハンニバル・ライジング スタンダード・エディション [DVD]
文字通りハンニバル誕生秘話なんですが、、
まず、ハンニバルが何故カンニバル(人喰い)になったのか説得力に欠けてた。
まぁ、これは仕方ない。
なぜなら原作者が人喰いじゃないかぎり、描きようがないから。
それと欧米の方の目には、日本はどうも神秘的に映るみたいで。。(汗)
気になったのはそのぐらい。
主役のギャスパー某は、A・ホブキンスに勝るとも劣らない怪演をやってのけてる。
笑うと出来る左頬のシワが不気味でした。
気がつけばレクターを応援する側にまわってましたよ。
ハンニバル・ライジング 完全版 プレミアム・エディション [DVD]
たまたま仕事の関係で話をした人から,「ハンニバル・ライジングは実は反戦映画なんですよ。その観点から見れば,よく作りこまれていると思います」と力説されたことがきっかけでDVDを買って観てみた。
さて,これ以前のシリーズでは,ハンニバル・レクターは常人の理解の及ばない殺人鬼として描かれていた。しかし,この映画では,妹と二人で幸せな子ども時代を過ごしていたハンニバルが,戦闘の巻き添えで両親を目の前で殺され,妹と二人で何とか生き延びたのに,その妹を戦場のならず者たちに「残忍な殺され方」をしたことで,深いトラウマを負ったことが,彼が殺人鬼となる理由として読み取れるように描かれている。しかし,過去の批評などをインターネットで検索してみると,「恐るべき殺人鬼が生まれるにはちゃんと理由があった,それは戦争だ」というメッセージは,明快なだけに,かえって一部の評者には不評だったようだ。サイコ・キラーは了解不能だからこそ恐ろしいということだろうか。
しかし,戦争の極限状況が彼を殺人鬼に仕立て上げたというストーリーは,実はそれほど単純ではない。妹が殺された状況の記憶の細部を封印することでかろうじて精神の平衡を保って生き延びてきたハンニバル青年が,妹を殺した連中のことを,自白薬の助けを借りてまでして思い出し,復讐へと突き進んでいくまでの様々な出来事と彼の動機の形成が,映画の中に丁寧に作りこまれている。実際,観ている私はいつのまにかハンニバルの側の観点でモノを見るようになって,彼の復讐が成就するのを喜ぶ気持ちがわいて,自分でも驚いたものだ(残忍な殺し方には辟易するが)。
人は普通人を殺さない。殺人鬼と呼ばれるような存在は,例外中の例外である。にもかかわらず,それを了解可能なように描くことは,自分たち一般人と殺人鬼との間に分かちがたい壁があるわけではなく,実は地続きなのだということを示すことになるので,ある意味,多くの人には不愉快かもしれない。しかし,戦争に巻き込まれれば,殺人は簡単な行為に転化してしまう。殺人鬼もまた,生み出されて不思議はないのだ。そうしたことを考えさせられたという点では,確かに反戦映画といってよいかもしれない。