未来の二つの顔 (講談社漫画文庫)
人工知能 (AI) の世界的権威=ダイアー博士のもとに重大な知らせが入った。彼が設計し、月面基地の管理体制を維持してきた新世代型AI=タイタンに致命的な問題点が発見されたというのだ!
その原因追及の過程で判明したこと…それは “AI” の根源に存在する問題。そしてそれに依る社会管理そのものの是非を問うものだった…。 われわれの未来に残された選択肢は二つある。
1AIの使用を無期限停止し、従来の管理体制を復帰する。
2より高等なAIを採用し、新世代の管理体制を構築する。
'79年発表。根本的に性質の異なる “ヒト” と “AI” 。もし新たに真の “知能” と呼ばれるものが誕生したとき、いかにして両者は相互理解に至れば良いのか。
そんな疑問の解決に対するホーガンの回答は、なんとも壮大な驚きの計画。自分が狙っていた方向に、とことん理詰めでうま~く持っていく能力は現代に甦ったソフィストそのもの。
ストーリーの骨子を確固に保ちつつ、派手なアクションを繰り返すその完成度に、私は“ベスト”の評価をしています。
THE SEA OF FALLEN BEASTS 滅びし獣たちの海 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
よく諸星大二郎と比較される。お互い、それは意識しているらしく、星野が諸星の家を訪問した際に、自分と同じような蔵書が並んでいるのを見て苦笑したというエピソードは有名だ。
ただ、この二人は画風は両極端といってよい。諸星の絵は手塚治虫をして、「彼の絵だけは真似できない」と言わしめたデビュー以来変わらぬ、ある意味で一生完成しないような画風であり、独特な魅力を持っている。
一方、星野之宣の絵はデビューの頃に既に完成されていたと思う。端正でリアルな絵、そしてスケールの大きなストーリーが魅力的な作家だ。その洗練度はますます高まっている。
作品については両者の空想力は方向が違うにせよ、お互いに引けをとらないと思う。むしろ本作品集収録の「アウト バースト」などを読むと、着地点は同じような気がする。
この作品集は何度目かのリメイク版であるが、大判でカラーページが再現されているのが特徴だ。作品としては海洋、北方の島、南洋のジャングル、宇宙空間とバリエーションにとんだ舞台で、それぞれ思わずうなってしまうような作品が収録されている。もし星野之宣を知らない人がいたら、入門書としては適切だと思う。
国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)
今となっては、史実ではなくなってしまいましたが、この斉藤道三の半生を描いた小説の魅力は全く色あせることがありません。独特の語り口と、スピード感。あまりにも痛快に一生を生き抜いた男の物語としてこれ以上のものはないと思います。史実に引っ張られた後半の信長編が、若干窮屈なのに対し(それでも圧倒的におもしろいんですが、、)自由奔放に書かれたこの全編は、司馬さんの前期の小説としては群を抜いた完成度だと思います。私はこの本ではじめて司馬さんの本を読み、それ以来数十年はまり続けです。