空飛ぶタイヤ DVD-BOX(3枚組)
「人の生き死に」に関わる自動車業界でこのあり得ない事件が起こりました。
大企業のエゴ、腐敗した組織、麻痺した倫理観。
これは全て本当に起きた話がベースなのです。
私は原作を先に読み、映像を後から見ました。
映像の方も原作に負けない良い出来でした。
暑苦しいほどの熱演の仲村トオルさん、脇の俳優さんたちの抑え目な演技から滲み出るリアリティ。
1話〜5話まで一気に見てしまいました。
職業人の倫理観と正義感を真摯に問う力作でした。
このあり得ない事件が繰り返されることのないように
一人でも多くの、ビジネスマン、就職活動中の大学生の皆さんに観てほしい作品です。
漂砂のうたう
2011年に直木賞を受賞した作品。同じ時に芥川賞を獲った『苦役列車』のような苦しい暮らしの話なのですが,さすがにこちらのほうが小説として格段にイケてます。根津遊郭のどん底の話。あの辺りの土地勘がある人はかなり面白く読めると思います。三遊亭円朝の話なども出てきますので,できれば落語に詳しいとさらによく味わえそうです。私はこの本を読みながら黒澤明の映画『どん底』の坂の下の長屋のようなところが何度も頭に浮かんできました。しかし,何ですね。最悪なことを考えると不思議と恐いモノなんてないような気がしてくるんですね。
山田誠二の新怪談 憑きまとい/死人の手ざわり [DVD]
短編ですし、普通の「映画」として評価出来るものではありません。低予算・ビデオ撮りの作品で、その中でどのくらいのことが出来るのか、ということを考えると、「憑きまとい」はなかなかのレベルではないでしょうか。
「死人の手ざわり」は京都の町家を不気味に撮っていて、なかなか雰囲気を出していました。いろんな映像を撮ることができない分、役者の「語り」で話を進めているのですが、その役者のお姉ちゃんたちが素人同然なので、かなりキツイです。オチはたぶん途中で分かってしまうと思います。
「憑きまとい」
10分くらいの短編なのですが、こっちの方が断然気に入りました。これといってストーリーはないのですが、悪夢のような内容で、結構怖いです。雨の京都の竹林という舞台が効果的に使われていました。こっちもオチは何となく分かるんですけど、竹林のそばの坂道という場所に視覚的なインパクトがあって、非常に心に残りました。
利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
利休が切腹を命じられた前日から物語が始まります。宗恩との会話・所作・審美眼、どれをとっても利休のピ―ンと線を張ったような緊張感に迫力があります。丁寧で美しい筆致に引きつけられ一気に読みました。
物語は、利休を取り巻く人(弟子・信長・秀吉)などのエピソードも非常に面白いのですが、クライマックスになるにつれ、3人の女性が利休をめぐって修羅場?!を迎えます。一つ一つのエピソードは利休の人生そのもので、若かりしころにタイムスリップするにつれ、瑞々しく、情熱的な生き方に触れることができます。
ラストは、もう利休には絶対に死んでほしくないと、利休が絶対的な幅をきかせて迫ってきます。それでも、突然死が訪れてしまう。それは、紅く美しい椿が花弁を落とすようにプツンと、命が終りを告げ、悲しみと利休の偉大さに、ただただ、平伏してしまいそうでした。
茶の道を、現在でいうと「仕事」に対する姿勢のようなものが伺えます。仕事は神聖なものだと、一種のビジネス書のような横顔をのぞかせつつ、歴史に、恋に、嫉妬にと内容たっぷり、味わい深い作品です。
性と生への執着。恋こそ生きる源なのだと、清々しい気持ちにさせられました。
月と蟹
子供から大人に近づきつつある年頃の言葉に表せないような心情がとても綺麗に描かれていて、幼い頃のやるせない気持ちとか歯がゆさとかが思い出されて、読んでいると言うより過去の時間を巡っているような気持ちにさせて貰える作品でした。
向日葵の咲かない夏を読んで納得いかずなんだかちょっと腹立たしい気持ちになった方でも楽しめる一冊だと思います。