鴨志田穣・西原理恵子ラストコラボレーション 戦場カメラマンの唄
おそらく、知らない人にとっては、他愛のない1冊の本かもしれません。
でも、ファンを含め、知っている人にとっては、そんなことは関係ないでしょう。
本書では「豪華メンツ」が鴨志田さんを思い思いに語られています。
思い出か、思い入れか。それぞれの心の中の鴨志田さんがそこにいます。
多くの写真も掲載されています。何だか、みんな、笑った顔ばかりです。
胃痛とストレスに悩む日本人が忘れかけていた、屈託のない笑顔が並んでいます。
そして「鴨ちゃん」を描ける唯一の人、西原理恵子さんのマンガもあります。
西原さんが描く鴨志田穣さんは、時折「人間」としてはどうかと思われるような
振る舞いを見せてくれますが、父として、また、人として真っ当な人であることを
彼女自身の筆が語ってくれています。愛だよ、愛。
CDブックなので、当然ながらCDがついています。
このCDは、必ず笑いながら聴き、決して歌詞を人前で読んじゃイケマセン。
何だか分らないけど、とても恥ずかしい事になってしまいます。
でも、大切な人の前だったら、良いかも知れません。
ファンのための、そんな1冊
副題は「鴨志田穣・西原理恵子ラストコラボレーション」
毎日かあさん7 ぐるぐるマニ車編
家族で世界をあっちこっちどっち、あれっ…ここはドコ!?
相変わらず家族で世界をうろうろしている西原家。
お兄ちゃんは反抗期中学生、妹ちゃんは女街道を突っ走る。
ふたりを落っことさないようにしっかり手を繋ぐ毎日かあさん、
しかし3人まとめて飛行機乗り遅れ&空港内で迷子(笑)。
エベレストだろうがどこだろうが、全く血肉になっていない子供たち(笑)。
自分のお金で行くようになったら、ちゃんと感動しますよ、多分…。
私の周りにも連れ合いを亡くした方がちらほらいらっしゃいますが、
立ち直りが早い(立ち直らざるを得ない)のは、子供がいる方なんですね。圧倒的に。
鴨志田さんの写真を忘れて旅に出られるようになったのも、
あの時、泣いていた西原さんを必死で笑わせようとした子供ふたりがいてこそだろうなぁ。
西原作品が立て続けに映画化されたりで、人気の程が伺えるのは勿論ですが、
やはり時代が「新しいサ○エさん」を必要としているのではないか、と思います。
大家族でもなく、家庭内の喧嘩の描写などほぼ無い和やか一辺倒の家族でもない、
等身大の、何も包み隠さず全て曝け出す、そしてちゃんと歳も取る、そんな家庭漫画。
理想どおりにはいかないよ、いかなくっても大丈夫だよ、って励ましてくれる。
芯が強いのに柔らかくて、臨機応変に変わりながら人間的にぶれない。
西原さんって、本当に海のような女性だなぁ、って改めて思う。
西原さんのフィクションでのフェイバリットは『ぼくんち』だけど、
このノンフィクション(勿論誇張を含めて)ありきのフィクション、補強し合う作品だな、と。
『ぼくんち』で弟二人を養っていた姉の姿が、現在の西原さんと重なります。
映画では観月ありさちゃんが演じてましたね。
子育てマンガ、と紹介されることが多いけど、子育ても人生のうちの一環。全てじゃない。
長い長い西原さん自身のクロニクルの中の、究極の表現とも言える子育ては、やはり読み応えがあります。
あと何巻か重ねたら「毎日ばあちゃん」も夢じゃないかも!
パーマネント野ばら [DVD]
しょぼくれた町、そして『だめんず』からも離れるに離れられない女性たちのお話です。という部分では、いつものサイバラ調です。でも今回は、ちょっとミステリーぽい話でもあります。そういえば、「いけちゃんとぼく」もファンタジーであるけど、ある意味ミステリーか。
今回の主人公たち3人の世代設定は、いわゆる『アラサァ』って辺り。菅野美穂は子連れの出戻り、小池栄子はフィリピンパブのママ、池脇千鶴は暴力男の間を転々とする、選球眼に難のある女性。(苦笑) 登場人物がみな男運がない。(笑) でもそれぞれの人生物語は壮絶なんだけど、支えあっていてあたたかい。
愛人の家に入り浸るなおこの義父(宇崎竜童がイイ感じ(笑))、みっちゃんの目の前でホステスを口説く彼女の夫、ホームレスになったともちゃんの夫(山下敦
弘監督作品でおなじみ、山本浩司のいかにものダメっぷりがイイ)など、出てくる男たちは甲斐性なしの人間ばかり。こんなクズどもは放っておいたほうがよいと思えるのに、それでも彼女たちは見捨てない。愛されるよりも愛することを選び、情けない男のために尽くすことが習い性になった女たちの「いつも恋していたい」という言い訳がいとおしい。
猫が死んだ時おお泣きした友達のともちゃんが、旦那が死んだ時は、けろりとしてたり、浮気旦那と別れても金を渡すみっちゃん。他人が見たらなんで?って思える夫婦にしかわからない絆や溝や恨みや愛なんかがあるんだろうな。
そして、クライマックス。あらためて思い知ることになります。友達は勿論、単に下品なおばはんとしか映らなかった『パーマネント野ばら』の客たちが、こんな慈しみを秘めていたなんて!! 同じ土地で同じように生きてきた女性同士ならではの、『理解』と『庇護(やさしさ)』。これは、ある意味凄いし、深いです。
前半は、笑えて、ラストは切なくなる作品。"人生色んな事があっていいじゃん"と思える反面、最後は本当に切なかった。
週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編
佐藤優の現状分析、体験談は面白い。主にロシアの話。つか、ロシアの話だけ。しかし友人にロシア旅行した人間はそう多くなく、ましてや住んだ人はいないので、ほおほおと感心する。
いささか誇張しているだろうが、本当なんだろう。ロシア人分析も、たぶん正しいんだろう。
けれども、その正確だろう分析に続いて、突然、とんでもない結論に落っこちるのだ。
どの経路を通って、どういったわけだか、全くわからないが、唐突に、断定口調で、日本はこうするべきだと出てくる。
あのー、前提と結論の間に乖離があるんですが……。
この、妙なスキップ感が、そこはかとなくおかしい。
意図的に問題をずらして笑いをとろうとしている西原理恵子の発想が常識人の物に見えるくらい。
この取り合わせは案外正解なのかもしれません。
佐野洋子対談集 人生のきほん
佐野さんと、西原さん・リリーさんとは
25歳ほども歳が離れているのに、
なんでこんなに気持ちよく対話できるのだろう……と、
読みながらずっと考えてました。
佐野さんが、すごくやさしいんですね。
それは西原さんもリリーさんも似ています。
カゲキな話、死にまつわる話も出てくる中で、
三人ともが、思っていることしか話してない。
そこがいいです。
笑いの中に、胸に響くまっとうな言葉が
たくさん散りばめられていて、
何度も読み返したくなる対談集です。