利休にたずねよ
読んでいるだけで、茶の湯の世界の美しさ、艶かしさを堪能してしまえるような
味わい深い面白さがあった。
名立たる武将の名が出てきながら荒々しい戦とは掛け離れた静かな攻防。
それがまた一味違った緊迫感を醸し出し、艶やかでうっとりしてしまう美しさの陰に緊張感を与えてくれる。今までにはあまり例のない時代文学かと思うので、是非ご一読を。
火天の城 (文春文庫)
リニューアル第11回松本清張賞を受賞した本格歴史小説。とかく歴史物といえば一部の熱烈ファン層以外は敬遠しがちなのだが、これはまったく歴史物のジャンルを越えて幅広く層の読者に受け入れられるであろう。とにかく綿密で幅広い知識と取材、しっかり構成された筋、さらに判りやすい文章によって話の中に引き込まれてしまう。今後の作品がいまから楽しみだ。
利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
山本氏の作品自体は素晴らしい出来栄えである。特に最後の張り詰めたクライマックスは、利休の異様な本質を露呈させる設定で、長く尾を引く余韻をかもし出す。しかし、作品の直後におかれた宮部みゆき氏による「解説」は、そんな緊張感と余韻とを一気にぶち壊す無神経さにあふれている。松本清張賞やら直木賞やら、高名な文学賞の選考委員をしている人からは想像もできない軽薄な内容で、秀逸な作品を読み終えた直後に、こんな解説を読んでしまった事が悔やまれた。自分が作者の山本氏であったなら、さぞかし苦々しい不愉快な思いにとらわれたことだろうと思う。優れた作品の解説には、それなりの名文を選んでほしい。