名前のない女たち最終章 セックスと自殺のあいだで
それぞれの女性の人生が壮絶すぎて言葉を失う。共通項はAV女優である,ということだけで,それぞれの人の人生は細かく見れば全員違う。でも,全員が何かしら不遇の家庭環境や生活環境上の困難や,あるいは嗜癖(依存)や精神疾患などを抱えている。
もちろん,不遇な環境にある人がすべてまっとうな仕事についていない,ということはまったくない。しかし,そうしたことが重なると,そこから抜け出すことは容易ではない。
AV業界自体も極度に縮小化しているらしく,簡単に稼げる業界ではないらしい。安く買いたたかれ,人生を擦り減らされる女性たち。しかし,そこから抜け出す方法は,そう簡単には見つからない。結局,体を使うことでしか,稼ぐすべがないのだ。
たしかに短期間で「稼げる」場合もある。時給800円でバイトするなんてばからしくなるだろう。しかし,稼ぐのと同じスピードでお金を浪費してしまう。お金への感覚がずれてしまうのだ。それと同様に,セックスへの感覚も,多くの人からずれている。
みな刹那的である。未来が見えない。今日生き抜くのに精いっぱいなのだから,それも必然である。そして,悪い循環が続いていく。
著者の中村氏はエロ関係の仕事をしていたが,「抜け出して」現在介護の仕事をしているという。「抜けられる」能力があったから抜けられたのだろう。しかし,ここに登場する女性たちは,まさにいまも生きているのだし,あるいは生きていけなくて,何人かは自殺してしまったのである。これも,現代日本の1つの姿なのだ。
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