フルメタル・ジャケット [Blu-ray]
公開当時はあまり評判がよくなく失敗作と言われていて見なかった。(蓮見先生も軽蔑を表明。) 先日無料特典を利用して見てみると、戦争映画というよりは、「博士の異常な〜」「2001年」「時計仕掛け」「シャイニング」と続いた現代的な発狂を淡々としかし衝撃的に見せる系列の映画のやはり新作であった。
ただ、ベトナム戦争自体が大統領からして既に異常人物という狂気のるつぼだったので、これを題材にしてそれまでの諸作と並ぶ映画にするのは(しかも2時間前後の短い時間内で)、よほどのシーンを連続させるかそうでなければ心理的な意外性をつくか、あるいはかなり変わった視点から描く(例えばベトナム戦争は正しかったのだと思い込んでいる人物を設定して完璧に彼の視点からベトナム戦争を輝かしい人類の偉業として描くとか、米軍が報道と異なり実は徹底的に負け殺されまくって追い出されたという視点でこれでもかというように米兵がのたうちまわる映画にする等)かしかないのではないか。しかもセットなどに莫大な金がかかる題材である。
そんなわけでキューブリックの映画としてはやや力がない。北に処刑された南のベトナム人の遺体が真っ白な灰をかけられて並んでいるシーンと最後の狙撃兵の正体が明らかになるシーンはよかったが。もしかしたらカットして落とされたシーンが多いのかもしれない(売春婦のシーン等途中であっさり終わっている)。1970年に既にWar Pigsという名曲(歌詞がすごい)を発売したブラック・サバスというバンドは偉かった。湾岸戦争のとき、毎日聴いてたな。テレビではまったくかからなかった。。。
それにしても米国の軍隊は品がない。世界でもここだけじゃないかと思うほどである。第二次大戦での英国やナチスドイツの兵隊はずいぶんきれいだった。兵学校教官の姿やしゃべり方がジョージ・ブッシュとだぶった。フエを訪れたことがあるが王宮はまだ半分修復されずに崩れていた。街を流れる河は緑色で美しかった。雨に濡れた米軍戦車や自走榴弾砲が並ぶ博物館で少女たちの写真を撮ったことを思い出す。
スタンリー・キューブリック DVDコレクターズBOX
キューブリックの名作がデジタルリマスターを施してボックスで登場。「2001年」は従来盤より鮮やかな画像になった。特典映像のアーサー・C・クラークのスピーチは無くなったが、問題にする程では無い。「時計仕掛けのオレンジ」「フルメタル・ジャケット」などは音声が5.1サラウンドになり、大満足。問題は「シャイニング」が短いコンチネンタル版になった事。それ以外は、満足できる良いセットです。
フルメタル・ジャケット (角川文庫)
原題『THE SHORT TIMERS(短期除隊兵たち)』。
この作品は映画の方が有名かもしれませんが、戦争文学の金字塔といえるでしょう。泥沼化した戦争として後世に伝えられるベトナム戦争ですが、前線の海兵隊員たちはどこか冷めていてユーモアを感じさせます。彼らは後方にいる人間を“事務屋”と呼び軽蔑します。
「戦争が醜悪なのは真実が醜悪だからであって、戦争そのものは実に真摯だ」という言葉は印象的です。
ちなみに、ラストの狙撃兵との対決ですが、映画とは違った結末を辿ります。惨たらしく後味が悪いです。
フルメタル・ジャケット [DVD]
スタンリー・キューブリックというと、巨匠という名がふさわしいだろう。
アポロの月面着陸は、実はキューブリックが監督撮影した映像という説も、
まことしやかにささやかれるくらい、いろんな意味で映像の魔術師であろう。
また、キューブリックの映画は何度観ても発見があり、
何度も観るに耐えうる作品でもある。
それくらい奥の深い作品の作り込みをしている。
そのキューブリックが撮影した戦争映画。それもベトナム戦争を舞台としている。
ベトナム戦争といえば「地獄の黙示録」「プラトーン」などが筆頭であろうが、
基本的にわたしは戦争映画が嫌いなので、この作品も観ていなかった。
しかし今年8月は、終戦65年ということで、
さまざまなドキュメンタリーやドラマがテレビで放映され、
戦争について考えさせられることが多く、この作品も観ようと思った。
作品という意味では、キューブリック作品というには、わたしの中では得点が低い。
しかし、前半での新兵訓練所で「殺人マシーン」へと鍛えられて狂気さ。
後半での戦場において、淡々と流れる時間の中、狂気へと変わっていく人間。
この空気に醸し出し方は、キューブリックのならではの、
長廻しカメラワークによる空気感だろう。
そこには、いままでの戦争映画のように、勧善懲悪も、英雄的な人物も出てこない。
ただ戦争という現実を、ありのままに表現しようとするのだ。
たまたまNHKでカラー処理された、戦争ドキュメンタリーの映像を観ていたら、
なにかキューブリックの映画に近いものを感じた。
カラーになった映像が、時代を超えて身近な現実感を与えたのだ。
キューブリックの描くこの戦争映画は、たとえば主役に同化して、
さまざまな苦境から乗り越えて、生き延びてよかったという安堵感がない。
どちらかというと、観ている自分はすでに銃に撃たれてしまい、
あの世から映像を観ているような気分にさせられるのだ。
なるほど、こう書いてみるとこの作品の重みがわかってきた。
鋼の錬金術師 COMPLETE BEST
せっかくこちらにいるのだからと米国版を買ってみました。
が、特典のDVDは新人歌手さんのプロモが1本入っているだけ、アニメ映像とかは全くなし、その上リージョンが違うので、日本では再生できる機器が限られるでしょう。
CDに入っている歌が日本語のままだったのはちょっと感動でしたが(アニメは導入段階で英語版オリジナルになってしまうことが多い)、歌詞が全部ローマ字表記(確かに誰でも日本語で歌えるようになるが、メチャメチャ読み難い)で英訳なしだったのには、少ーし唸ってしまいました。
いろいろ考え合わせると、日本語が得意な人は、素直に日本版買った方が宜しいかと思います。