上達の法則―効率のよい努力を科学する (PHP新書)
上級者と中級者の違い
ある分野の中級者ぐらいになっていてさらに次のステップ、上級者に
なる為に必要な行動指針として本書は非常に役に立つと思います。
アイコニックメモリ(感覚記憶)からワーキングメモリへとそして長期
記憶へと移行しそのことを習熟することに必要なことは、メタファー
(言語化)と手続き動きのコーディングにある。
確かに一部の天才的な達人は別として、多くの上級者はその得意分野
の説明が非常に上手で言葉での表現も分かりやすく話せる人が多いこ
とに気付きます。
効率の良い上達する為には得た経験をできるかぎり言葉にして自分に
説明する、できれば書きとめる。
その書く行為そのものが整理し、把握し、記憶する行為となる。次の
機会により上級者に近づいた対応ができるようになるということにな
ります。
バカはなおせる—脳を鍛える習慣、悪くする習慣
内容的に題名は「信頼ある脳を鍛える方法」となるが、これでは売れないので「バカはなおせる」となったのであろう。最近、マスコミで話題が多い「脳ブーム」に対応して、脳の最高権威という立場から、脳に関する最近の研究から、一般の読者に誤解をしないように間違った解説に警告するとともに、脳の活性化について現段階で行うと効果的な信頼性ある方法を平易に述べている。
著者の久保田京都大学名誉教授は74才、「脳機能」の日本における最高権威であるという。任天堂DS用ゲーム「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で有名な川島隆太教授の指導者でもあるという。
まず、驚いたことは、「脳内汚染」の岡田尊司氏のゲームをするとドーパミンが増加し、それは麻薬と同じ症状だという説がおかしいようだ。著者によると、ドーパミンは脳の活動を活性化する。だから、ゲームも脳には好ましいいう考えである。正反対である。
著者は「現段階では普通のシツケの一環で、ゲームとうまくつきあいなさい、つきあわせなさい、というだけの話で、過度にゲームやネットを『脳を衰えさせるもの』『キレやすい性格にするもの』として恐れる必要はない。一定時間ゲームを楽しんで、予定通りやめて、別のことをできるように子供を教育したらいい。」ということか。
著者は運動や人との対応が脳の活性化に対して非常に重要であるということを強調しているので、ゲームのために、引きこもりになり、運動や他人との対応が減るとそのマイナス面が考えられると理解したほうが良いであろう。ゲームそのものではないのである。老人などは脳の衰え防止に効果的であるとさえ言っている。
このように、運動重視との関係で考えると「コンピュータが連れてきた子供たち」の戸塚氏の意見も久保田氏の言っていることとはそんなに変わらないことになる。
久保田氏はこの本の最後で、「ゲーム脳」を言い出した森昭雄氏をかなりきびしく批判している。森氏の脳波による実験では脳の働きについて何かを言うのは専門的に信憑性にかけるというわけである。
弟子?の川島隆太氏の計算ドリルや漢字の書き取りなどが「前頭前野を発達させる『かも』しれない」という限り問題ないが、「前頭前野を発達させる」と言い切られると、それはまだ科学的に問題だという。しかし、著者は、任天堂DS用ゲーム「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は楽しみながら、前頭葉を鍛えられる「だろう」と推測できるのでおすすめするとある。品切れ続きの任天堂DS用ゲーム「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を最近ようやく手に入れただけにほっと一安心である。
「バカの壁」の養老孟司氏についてもコメントしている。専門的に間違っている点を2点ほど指摘しているが、著者もいうように、これは養老氏の論理に問題を与えるほどのことはないようだ。
著者は、脳の活性化のために、老人でもランニング(ジョギング)をすすめている。しかし、脳のほうはそれでいいかもしれないが、心臓は問題ではないのか。死亡事故がときどきある。そういう問題は、運動医学専門家を含め体全体の専門家の意見が必要なようだ。