ロスト・イン・トランスレーション
とても美しい容貌の持ち主であるジャズ・ヴォーカリスト、ベイ・シューのセカンド・アルバムです。「天は二物を与えず」という言葉は、彼女には当てはまりませんでした。
中国の重慶出身で、現在ニューヨークで活動中ということですが、インディアナ大学で会計学を学んでいただけあって英語の発音には何の違和感も持ちませんでした。
外見と違い、声質は、意外と太くハスキーでその力強い歌唱が見た目とのギャップを生み、感覚的に気に入りました。
スタンダード・ナンバーの「Love me tender」を実に情感たっぷりに堂々と歌い上げています。ピアノのサイラス・チェスナットのリリカルな音色に乗せて、雰囲気をたっぷり感じながら彼女の歌うこの名バラードを聴いていますと、年齢も国籍も美貌も関係なく音楽に浸れました。可能性を秘めた歌唱だったと思います。
松任谷由実の「A Happy New Year」では、新しい年を迎えながらもどこかアンニュイで寂しげな雰囲気が伝わってきます。ユーミンやベイ・シューの出自の「アジアン」を意識したアレンジでしたし、静寂の中に熱い感情が流れているのが伝わる歌唱で、個人的には一番気にいった曲でした。ただ惜しむらくは、後半部分を日本語で歌ったわけですが、発音もさほどよくありませんので、無理をせず英語で通せば良かったのではと感じた次第です。
ピアノのサイラス・チェスナットのリリカルな演奏は気に入りました。ベイ・シューのバラード唱法を支える重要な役割を果たすとともに、間奏や前奏での抒情的で雄弁なピアノは相当な力量を感じさせるものでした。別の意味で収穫があったCDでもありました。
IT’S SEOUL 塩田貞治の新しいソウル案内
普通のガイドブックにはない、現地の方々の流行がわかっておもしろい。
おもしろかったぶん、食事だけの本とかお土産だけの本とかカテゴリー別にもっと教えてほしいなと思います
黄泉がえり スタンダード・エディション [DVD]
旅立った人たちが、一番会いたい人のもとへ帰ってくる。でも葵が一番会いたい人はなぜだか帰ってこない。最初は観客とともにその理由を探していくのだが、時間がたつにつれて謎が解けていく。葵はなんて切ないんだろう。最初から仕掛けられた伏線がひとつにまとまるとき、その瞬間はやってくる。映画の特性上これ以上は書けないが、美しくも悲しいラストシーンは忘れられない。RUIの旅立ちの曲もすばらしかった。魂に響く作品である。
盤上のアルファ
団鬼六著真剣師小池重明を読んでいたため、小池氏との類似点を多く発見してしまい少し感情移入が難しかったように思えます。ノンフィクションとしての小池重明氏の人生がすさまじかっただけにフィクションだと一つ引いて読んでしまう所でしょうか。また、昔主人公と接触した人物が突然現れたりするのでそこもやや残念なところでした。ただ将棋を題材とした小説は少ないですが将棋を知らない方でも読みやすい内容になっていると思います。
どろろ コレクターズ・エディション [DVD]
本作の世界観は好きである。どことなく黒澤の「乱」に今風の主演ふたりを飛びこませたようなイメージは「2に続く」的なラストまで一気に魅せる。それにしても脚本の中村雅は、本作といい「ドラゴンヘッド」といい「スキヤキウェスタン」といい「神様のパズル」といい、どうも奇想天外なものが多いなあ(笑)。もう少し快活なホンのほうが良かったとは思うが、まずまずのまとめ具合だった。チン・シウトンのワイヤーアクションも「LOVERS」「HERO」張りに飛ばしまくって見事だったし。それと得盛り状態の特典映像が凄い!正直、素材の寄せ集めのため、ダブるシーンが多いのが難点だが(笑)、製作の裏側がよく分かった。早く続編が観たいのだが、パート2は2009年予定とある。妻夫木は現在、大河に入っているので、その後インしても最短で2011年正月くらい?パート3は2012年夏くらいだろうか。観る方としては気長に待ちたいものだが、監督と脚本は変えたほうが良いのでは?塩田組が悪いというよりも、塩田組には向かない素材かな、と思うので。本作は星3つ。