NHK人形劇クロニクルシリーズVol.4 辻村ジュサブローの世界~新八犬伝~ [DVD]
「もう無理か…。」と思っていたけど、まだ大丈夫だと知って購入することに。
長いこと、番組本編と、インタビューその他は分離した形で収められているものとばかり思っていたが、ディスクをセットすると自動的に再生が始まり、全体がひとつのドキュメンタリー番組のような形で構成されていることに気づいた(メインメニュー画面から、各パートを選んで再生することも可能)。これなら番組に思い出を抱いている方にも、初見の方にも、それぞれに興味深く見てもらえるだろう。確かに、現存する3話分の中に『新八犬伝』を代表するような見せ場はほとんどないが、番組のもつ独特の雰囲気は十二分に伝わるものと思う。後にDVD化された劇場版からも、八犬士の“名乗り”の部分を収録。1985年5月(だから、九ちゃんが123便に乗る少し前だ…)オンエアされた『NHKライブラリー選集』の九ちゃんのコメント部分も、うまく番組の前後にサンドする形で収録してある(あわせて収録の『真田十勇士』は、今だったらもっとブームになるかもしれないな…と、人形のデザインを見ていて思った)。
とにかく、こういった類のソフトは「まだ大丈夫だな…。」と思っているとあとで後悔することが多いので、自分にとってそれが必要であることに気づいたら、一刻も早く押さえておくことをおすすめしたい。
眠狂四郎 ~無頼控~ DVD-BOX
……なつかしい。
思えば昭和の末期、私が大学生の頃、すでにテレビ東京午後の一時間枠で再々放送していたシリーズであります。
当時は未だ、小学生がお爺ちゃんお婆ちゃんと一緒にテレビにかじりついている時間帯に、ころび伴天連の外人さんが裸の日本婦人に覆いかぶさるシーンを平気で放映していたんですな。
柴田錬三郎の原作では『切支丹坂』と銘打たれた作品が、『悪魔儀式いけにえの女体』になっているなど、テレビ視聴者の期待を高める刺激的なタイトルが続きます。
さて、眠狂四郎と言えば、日本のピカレスク・ロマンの権化(?)。
狂四郎はゴルゴ13のようにいつも無表情であればよく、必ずしも正義の味方である必要はないはずですが、無頼控では「しばしば」どころか、頻々と義のために一肌脱ぎまくります。
「こんな狂四郎はイヤだ!」という人もいるかも知れませんが、考えてみれば映画の市川狂四郎だって、原作から観れば、ずいぶん砕けております。
あらためて、片岡狂四郎のツンデレ的魅力を掘り起こしたいと思います。
破軍の星 (集英社文庫)
主人公の若き公家侍、北畠顕家が年のわりに落ち着き過ぎている点は、ミーハーなファンにとってやや玉にキズですが、公家が戦わなくなって久しい世の中で敢えて戦乱のさなかに身を投じ、公家という立場に悩みながらも己の数奇な運命を受け入れるその姿は、眩しいくらい素敵でした。
顕家が活躍したのは南朝(宮方)と足利氏(武家方)の激戦時。南北朝という昏迷の時代がいっそう混戦状態になる時期で、少し南北朝時代をかじっていないと展開を理解するのが難しいかと思いきや、ここに絡んでくる公家でも武家でもない山の民・安家一族や忍び者・如月の存在が、複雑な時代背景を余計複雑にするのでなく、様々な立場に生きる者たちを繋げ、ひとつの時代に生きる者としてうまくまとめてくれています。
公家と武家の戦と平穏、その狭間で揺れ動く顕家の心情も細やかに描かれていき、読み手の心にびんびん響く力強い言葉のひとつひとつが秀逸。
淡いロマンスもあるのですが、甘すぎないところがまたいいのです。
そうした主人公の魅力もさることながら、その他大勢、カッコいい男たちの匂いが作品全体にぷんぷんしていて、酔えます(笑)
主役の顕家からは敵方にあたる武家方のお歴々、足利尊氏や足利直義、麾下の斯波家長や上杉憲顕らも勿論魅力的で、かつ彼らの心境心裡に深く切り込んで描写された時代観は、個人の魅力以上にこの時代の面白さを物語ってくれます。
史実では非業の死を遂げた顕家ですが、ラストを悲劇で終わらせないところがまた憎い演出です。
真田幸村 (文春文庫―柴錬立川文庫)
現存している歴史資料において、全てを正確にするのは不可能だ。
特に、その時々の心の動きは書き手の想像力に頼るしかない。
柴田錬三郎さんは、その想像が素晴らしい。
柴田さん自身が登場人物になりきっている。
「自分が真田幸村ならこんなことも考える」
そんな可能性を最大限に追求している。
豊臣秀頼が、海外に逃亡し、外国で王になっていたらどうな
るか?
私自身も、その大きな可能性に魅せられ読みふけってしまいました。