龍の七部族 I 〈水方郭〉、陥つ (朝日ノベルズ)
『デューン砂の惑星』や《新しい太陽の書》を思わせる、異世界SF(ファンタジー)の傑作。これは、かなり面白いです。まず、設定が良いです。純ファンタジー的な世界に、《異星人による歴史への介入》という純SF的な異物が入ることによって、物語世界に、壮大な奥行きの深さが与えられています。次に、キャラクター描写が素晴らしいです。主要人物だけでも15人を越える、かなり大所帯の物語なのに、一人ひとりのキャラの立ちがとても良いです。この辺りには、娯楽作家としての、ひかわ玲子氏の実力を感じました。さらに言うなら、テーマが素晴らしいです。この作品のテーマは、《新しいミレニアムの始まり》。21世紀の日本で、この物語が描かれた意味は、大きいと思います。西暦から換算すれば、《第三ミレニアム》に突入した今、この物語の持つ意味は、重要だと思います。単なる娯楽を求める人にも、それ以上の何かを求める人にも楽しめる、重要な傑作だと思います。
くるみ割り人形/白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
バレエ鑑賞の際によむ「あらすじ」がピンとこなかった私ですが、
この本ですっかりストーリーが納得できました!
それどころか、情感あふれる物語にすっかり夢中になってしまいました。
もちろん、すぐに「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」のDVDを再生(笑
以前に見たときより、ずーーーっと感動しました!
バレエの物語が、こんなにも豊かなお話だったとは。
クララのクリスマスイブののわくわく・キラキラの情景は幸せと彩りに満ちていて、
オデットと王子の切ない愛の物語は感動と安堵へも導いてくれて。
バレエを見る前にこの小説を読めば、きっと何倍も楽しみが増すと思います。
意外にも、「バレエの物語の小説」は無かったのではないでしょうか?
小学生中級からOKの小説ですので、バレエを習っている方々にもお勧めです。より演目への愛が深まるでしょう。
バレエを愛する全ての方へ、またはバレエをたまに見るチョイ好きの方へも、是非読んでいただきたい1冊です。
他の演目の物語も読んでみたいです。
ゴッデス! 1.女神さまって大変なの♪ (HJ文庫)
軽い感じの煽りとは裏腹に、どっぷりファンタジーです。生徒会長と副会長という学園モノな設定もどこ吹く風、まさに主人公達共々読者も一緒にシーンの展開について行くのがやっとというテンポですが、さらにこの1冊で決着を付けようとしていない感じが最初からあり、読み終わった時点でもどーなっちゃうの?という不完全燃焼状態です。雑誌連載作品と言うことで、物語の尺が見えない作品でもあり、ちょっと読み方をコミック本のように考えないと自分の中で盛り上げ方に困ってしまう1冊でしょうか。
水晶の娘セリセラ〈下〉 (講談社X文庫―ホワイトハート)
久しぶりのエフェラ&ジリオラシリーズということで、とても楽しみにしていたのですが、内容については、今までのひかわさんの作品を知っているだけに、少々残念でした。
1巻などで、どんなにセリセラが特殊なのか、「普通」であることが理解できないのかを描かれていたのに、なぜ、最後のあの戦争を引き起こしたしまったことがいけないことであるのかを、理解できたのか。
死人を恐いとも思わず、戦争で死んだ人を見てもそれほど衝撃を受けず。そんなセリセラが、あの戦争を見て、なぜこれは悪いことだと思えたのか。
確かに表現はされていましたが、もう少し深く掘り下げて欲しかったです。
「お友達」についても、もう少し説明が欲しかったです。
セリセラが物語の主人公となるには、少々幼すぎたかと思いました。
今までのエフェラ&ジリオラシリーズを見ているだけに、今回のお話は少々軽い感じがあり、残念でした。