ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
これほど、手に取る前からのイメージを裏切った
映画は他になかった。
ひとりの普通の女性が、老トレーナーの下で
鍛錬を積み、そしてチャンピオンに至るまでの
輝かしい軌跡を描いているのだろうと、
そう思い込んでいた。
実際はそんな、「ロッキー」のようにはいかない。
生きるということ、人生とは、やはり厳しい。
幸せなことなど、厳しく悲しい事柄に比べたら
ほんの一握りの瞬間に過ぎない。
それをまざまざと見せ付けられたような気がした。
ボクシングという、命を張った人間の生き様。
そこには常に、今死んでしまうかもしれないという
張り詰めた緊張感がある。
そしてそのそばで支えるトレーナー。
教え子の命が消えかかりそうになっている
場面にも向き合い、さらに苦痛に悶え、
生きながらえさせられる教え子の姿に胸を痛め、
彼女のたったひとつの願い、自由意志を受け止め、
そして最後に彼が選んだもの。
簡単に答えを出せるものでも、そして出た答えが
本当に正しいのかどうかもわからない。
深く、重い問題だ。
見終わった後も、これでそれぞれはよかったのか、
結論を出すことがとても難しい。
だけど、目を背けてはいけない大切な問題なのだ。
それをクリント・イーストウッドは訴えていたのかもしれない。