
Wの悲劇 廉価(期間限定) [DVD]
女優の座をめぐる熾烈な舞台。そのドラマは、現実と部隊が重なって妙味を与えてくれます。今見ると薬師丸ひろ子も若いですが、映像の中での現実の芸能レポーターも若々しい。
舞台のラストシーンは、一場面だけでも胸にこみあげて来るものがありますね。これも、薬師丸ひろ子の演技からくるものでしょうか。笑って別れる薬師丸のセリフに、拍手を贈る世良。プロに徹する女優の厳しい姿を感じて、涙が溢れてしまいました。
今や大女優となった薬師丸ひろ子の初期作品で、彼女のために作られた映画ですが、今でも見応えがあります。

Wの悲劇 新装版 (光文社文庫)
エラリー・クイーンの悲劇シリーズにちなんでこのタイトルになっていますが一切関係性はありません。
内容的には背表紙に書いてある範囲内で言いますと、自分に迫ってきた祖父を孫娘が刺殺してしまうのですが、
家族総出で隠蔽工作を行うというものです。
最初に犯人がわかってしまうのですが、その後の展開が実に滑稽で面白かったです。
2時間枠でテレビで放送されたものはパロディ調でしたが、こちらの原作はシリアスな雰囲気です。
お勧めの作品ですので夏樹静子を知らない方でもぜひ読んでみて下さい。

裁判百年史ものがたり
我々には、長らく、裁判官というのは、縁のないものであった。
しかし、はじまってしまった、裁判員制度。
我々が、裁く側になってしまうかもしれない。
この本は、近代におこった「大津事件」など、重大な事件12をあげて、
裁判官や弁護士の苦悩を掘り起こし、裁判の本当の姿に迫ってくれる。
ノンフィクション作家(正確には、ミステリー作家か)夏樹静子の手になる
裁判の「物語」を味わってみるのも、物の見方を豊かにしてくれるのではないか。

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)
私も腰痛で、現在も整形外科に通院する身です。
ですので、とても人ごとではなく、夢中で読みました。
一つには、作家夏樹静子先生が、腰痛で休筆に至るほどひどかった
ということを、本書で初めて知りました。
2つには、腰痛との壮絶な戦い、人生をかけたほどの戦いの記録で、
肉体的によりも、心因的な治療が、いかに壮絶であるかを知りました。
3には、人間の心と体には、まだまだ総体として、未知のことが
たくさんあるということを実感しました。
自分自信の腰痛体験と、本書の内容をダブらせて読まないわけには
いきませんでした。
驚嘆すべきは、自身の煉獄の苦しみの記録でありながら、読み物と
して飽きさせない文章と、科学者のように冷静で客観的な証左の記録
も混在し、患者ながら医学的にも、同じ悩みを抱える多くの人々
に、役に立つ(腰痛への対処という面でも、患者としての症例と
いう意味でも)側面の両方を兼ね備えていることです。
読み始めたら一気に読んでしまいました。作家といえども、ここまで
プライベートなことをあからさまに公開する、その勇気を賞賛します。

風の扉 (文春文庫)
近々、文庫新装版が刊行されるようだ。
だから、ストーリーの詳細、特にネタになる部分にはふれないでおくが、著者には珍しい医学ミステリである。
そう言ってしまうと、ネタの半分くらいはバレバレになってしまうのだが。
驚愕の真相には、度肝を抜かれるに違いない。
なんといっても、21世紀の現在でも不可能なことを、昭和の時代にミステリのネタに設定するのだから、まるでSFである。
はたまた、楳図かずおのホラーマンガであろうか。
そう、本作の設定は、いかにもマンガチックなのである。
そして、それをどれだけ許容できるかで、本作が傑作か駄作かの評価が違ってくる。
わたしは当時、大変面白く読んだ。
若い頃なので、許容範囲が広かったのだろうが、多分今でも許容範囲内だろう。
一応の、もっともらしい説明はある。
まるで白土三平忍者マンガの忍術の説明みたいではあるが。
かつて、土曜ワイド劇場でドラマ化されたのを見たことがある。
あの役を故高松英郎が演じていて、妙な迫力と恐怖感を醸し出していた。
私はドラマを先に見てから原作を読んだが、どちらも面白かったといっておこう。
おそらくドラマ版は再び見ることはかなわないと思うが、原作は何度でも読み返せる。
今回の文庫新装版刊行を機会に、もう一度読んでみても良いかと思っている。
その、もっともらしい説明の無理さを、もう一度楽しんでみたい。