らも―中島らもとの三十五年
中島らもはエッセイを書いていたときでも作家でした。
思春期をこじらせた若者がぐっとくるように、精密に作り上げられた笑いとペーソスの世界の裏側を明かす本です。
奥様の美代子さんは困っちゃうぐらい正直な人です。
二人の生涯を結わくキスの後、
らも「ごめん」
美代子「ううん、そんなことないよ。私、誰とでもキスするから」
ああ、正直にも程があります。
そんな、ぽやぽやと浮遊するかのような二人の結婚に、
子供、生活、アルコール依存症、女、男、仕事、女、女がのしかかります。
らもさんがつき続けた読者への嘘を美代子さんは暴いてしまいました。
なぜなら、美代子さんにとって、らもさんは美代子さんだけの宝物だから。
らもファンからはいろいろな意見がある本でしょうけど、らも著作に「腑に落ちた」と思いたい読者には種明かしになる1冊です。
お父さんのバックドロップ [DVD]
号泣した。
ただ、泣こうとしたら、南方師匠が笑わせるんだよね。
原作とはだいぶイメージがちがう仕上がりだけど、それがいい方向に向かった。
らもさんも観れるし。
それだけで泣いちゃった。
ボクは、らもさんの著書で育てられたようなものだし。
心が雨漏りする日には (青春文庫)
この本では自分の鬱のことをあくまで客観的に優しく描いてると思います。笑えるような場面もあるんですがなんだか切なくなります。らもさんの文章の温かさ、優しさが心に沁みます。
「くたばれうつ病」と豪快に笑い飛ばしたあとのらもさんの小さなため息が聞こえてくるようで、なんだか切なくなりました。
僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
人生のどん底に落ちてたときに読んだ一冊なんですが、以来、手放せません。
この本をきっかけに、らもさんの本を買い漁るようになったほどです。
読んでいると、自殺した友人に宛てたお叱りの文章のようなものがありますが、これを読んで思わず泣きそうになりました。
それを読んで励まされて、今の自分がいて、僕は毎日をなんとか生きています。
言葉の力って凄いですね。
今では大事な大事な一冊。
この本に出合えたことはとても幸せなことだったと今でも思います。
ほんとに「もうダメ!限界!」という方に読んでいただきたい本です。
らもトリップ [DVD]
かねてつ食品の雑誌広告「啓蒙かまぼこ新聞」や「笑殺軍団リリパットアーミー」主宰で知られる、中島らも。そのスロウな生きざまと「お前に橋は渡らせんぞ」「飲んだら出るな、出るなら飲むな」など名言の数々は今でもカルト的な人気があるという。
東京芸大が中心となり企画から制作、配給、公開まで携わったこのフィルムは、中島の短編小説をドラマ化したフィクションパートと、関係者11人のインタビュー「らも語り」のドキュメンタリーパートで構成されている。
ドラマは、ヘビ女がヘビメタロッカーに昇華する青春ドラマ『クロウリング・キング・スネイク』(主演:小島藤子、松尾貴史)、画商の中年男が美女に自分の生き血を飲ませる恋愛ホラー『微笑と唇のように結ばれて』(嶋田久作、永池南津子)、ちっとも似てない自分のクローンとただならぬ関係に陥るSFコメディ『仔羊ドリー』(勝村政信、諏訪太郎)の3本。思いつきを痛快なエンターテインメントに展開させる、中島の才気を感じさせて上々の出来栄え。
「らも語り」は山内圭哉(たかや)、古田新太、原田伸朗、チチ松村の4人がハイライトだ。とくに元リリパットアーミー劇団員で半ば付き人だった山内の話には笑殺されぬよう注意である。この人の話を聞くだけでもこの作品には価値がある。
酔いどれうつ病患者で荒くれ最後の無頼派、でも心底優しい。そんな弱い者の味方、中島らもの人となりが、途中で挟まれるライヴシーンの中島の歌とともに、ひしひしと伝わってくる。
障害や人種なんかを越えた全存在を全肯定した、中島らも自作自演のエンディングテーマ『いいんだぜ』には涙を禁じ得ないだろう。ライヴでケンカを売ってきた客を「執行猶予中なんや」のひと言で黙らせる、無敵のロックンローラーに喝采!!
永遠(とわ)も半ばを過ぎたって、中島らもは不滅である。