19歳―一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)
この本の読後の焦燥感と言ったらない。
一文字、一行、一ページめくるたびに胸に詰まる息苦しさ、恐怖、怒り。
『19歳』を読まれる方に。この本を一冊読み終えた後、きっと数日の間、この事件のことで頭がいっぱいになってしまうと思う。あまりにも残忍な事件のためである。
しかしあなたがもし、この事件に少しでも興味や関心があるのなら、ぜひとも一読してもらいたい。これはレビューを書く私からの切なる願いでもある。
この事件は知らなくても生きていける。しかし、知ってしまった方には必ず読んでいただきたいのだ。
それは私以外の方々にもこの事件を同じように共感、もしくは深く知っていただけることが被害者のためでもあり、また、事件を知ってしまった私にとっても心の救いとなる。
このような殺人事件を実録した名作『誘拐』(吉展ちゃん事件について)のような緊迫感を味わいつつ読むようなものではなく、ただただ犯人の冷酷で残忍な行為を順序だてて並べ、被害者たちの生々しい苦しみを読みとらせるものである。特に娘が受ける苦しみはいくら言葉や文章で伝えようとしても思い及ばぬものである。抵抗できぬまま、犯人の思い通りにさせられる彼女の悲しみや怒りは計り知れない。
『19歳』はこのような生々しい殺人事件の記録である。
大袈裟かもしれないが読むためにはある程度の覚悟が必要である。
後味はけして良いものではない。
しかし日本の歴史に残ったこのおぞましい事件を克明に知ることができる大切な資料であることに違いはない。
追記として…この『19歳』と合わせて読んでいただきたいのが『殺人現場を歩く』である。この本に市川一家四人殺人事件の現場のマンションとその周辺の写真がはっきりと掲載されているからだ。