ヴァイブレータ スペシャル・エディション [DVD]
一見行きずりの出逢いだけれど、
そんな一言で片付けてしまえないとても深い出逢いだと思いました。
女性は男性と出逢って、色々な行動で男性を試して反応をみてみるけれど、その度に男性からその感情を受け止めてもらえて、その中で女性がかわっていく様子が素敵でした。
男性の優しさを「本能」という言葉で表現していたのが印象的でした。
ラストシーンは、寂しかったけれど、大人だからこそ
あのような別れ方が出来るのでしょうか。
東京プリズン
赤坂真理さんの『東京プリズン』をたったいま読了した。
小説というよりも、長大でダイナミックな詩であった。この2日間、電車移動中に活字を追いながら、ずっと不思議な感覚のなかにいた。力強い浪のうねりにもみくしゃにされ、と思うと不意に浮上させられ、やっと息継ぎができると思ったら、再びまた別のうねりがやって来て海底に引きずり込まれる。海にいるかと思ったら、実はそこは川であり、川かと思ったら森林であり……とにかく言葉とイメージのダイナミズムとアクロバティズムに翻弄された2日間であった。
そして、最後の数ページ、終わるのを惜しむように意図的に速度を落として読み進めていたとき、自分の頭蓋骨の内側で、マーラーの第8交響曲によく似た、しかしもっと複雑な調性を持つ交響楽が鳴り響いているのを感じていた。
いろんな読み方ができる小説だと思う。疾風怒濤の成長を描いたアヴァンギャンドな教養小説、愛着と憎悪の両価性を揺れる母娘の物語、あるいは、反復されてきたあらゆるトラウマの始原としての戦争、戦後の日本と米国、世界とか宇宙とかという、とてつもない大きなスケールの話……。いろいろな意味の可能性が多層的に見え、多声的に聞こえてくる。でも、私は、まずは「詩」として言葉に身を委ね、翻弄されるのがよいのではないかと感じている。
残念ながら、いまはまだここまでしか感想を言葉にできない。もっと具体的で分析的な言葉が析出するには、もう少し時間が必要そうだ。ただ、はっきり言えるのは、短編集「コーリング」や「ヴァブレータ」以降、自分なりにフォローしてきた赤坂さんの作品のなかで、掛け値なしの最高傑作である、ということである。
蝶の皮膚の下
「わたしはりか」のくだりから二重人格を元に設定されたストーリーなのかと
読み終えた今、確かに性描写が多い気もするが赤坂さんの特徴なのか
男女間のやりとりを表現する際、もっともわかり易い。といつも感じる。
形容せずにリアルに、アルコール・ドラッグ・セックスなどの描写を書くことが
読んでる者にその中の人物と状況の一体感、想像と感情を沸き立たせる気がする。
ヴァイブレータ スペシャル・エディション [DVD]
一本の映画が、俳優の眠っていた才能を開眼させる事がある。むろん、眠っていたのは役者ではなく
周囲の状況だったりもするのだろうが、そんな映画との良い出会いが観るほうも幸せにしてくれる。
この『ヴァイブレータ』は、正にそんな映画だ。
深夜のコンビ二。みぞれが雪に変わる寒い夜。ワインを買いに来た寺島しのぶ演じる主人公早川玲(寺島しのぶ)の
モノローグで映画は始まる。
6分近いモノローグと、トーキー映画のタイトル字幕の様な心象の見せ方で、グッとこの映画の世界に入り込ませる演出が上手い。
主人公が心の声に悩まされるルポライターと言う設定もあり、この映画には合っている見せ方だと思わせる。
何時からか自分の頭のなかに氾濫する“声”に悩まされ、アルコール依存症と過食・食べ吐きに陥っている31歳のルポライター玲(寺島しのぶ)は、
コンビニでふと見かけた長距離トラック運転手の岡部(大森南朋)に惹かれて関係を持ち、そのまま彼のトラックに乗り込のだった・・・。
二人を乗せて走る2トントラック。大きくも無く小さくも無いそれは、二人の居場所を象徴しているかの様だ。
「オレ、中学もまともに出て無くてサ、シンナーやって、風俗店で女の子の手配とかやってた・・・」「ワタシ、変な声が聞こえるの。
食べ吐きって知ってる?友達の影響で、ワタシもはじめて癖になっちゃった・・・」そんな裸の会話とトラックの静かな振動が、次第にココロを癒して行く。
二人が今までの嘘と思いをゆっくりと吐き出す定食屋のシーンと、突然の吐き気と不安に襲われる玲を岡部が
バスタブで抱きしめるモーテルのシーンが良い。肌を合わせること事から始まった出会いは、トラックの振動に合わせ、
やがて岡部と玲の魂のヴァイブレーションが解け合って一つになる。最後のコンビ二で別れ際に玲が見せる表情は、別人の様に新しいチカラに溢れていた・・・。
新潟までの3日間、72時間のロードムービーのスタイルで、都市に棲む孤独な魂の再生を感じさせる魅力的な映画だ。
監督は東京ゴミ女の『廣木隆一』。芥川賞の候補になった『赤坂真理』の原作を、『荒井晴彦』が見事な脚本に仕上げている。
この映画でその年の映画賞を総なめにした寺島しのぶの演技は勿論見事だが、達也がこの映画を観たいと思ったのは、
トラックの運転手を演じた『大森南朋(なお)』の存在が気になったのだ。と言うのも、4月に劇場で観た『蟲師』の虹朗を演じた
大森の演技が良かった故。出しゃばらず、そこに居ることがココロの癒しになる様な不思議な空気感を持っている。
そう言えば彼のは父は、舞踏集団『大駱駝艦』を主宰する俳優の麿赤児だった。うーむ、赤児の魂、南朋までも(すんません)。
しかしこの映画は、かなりの低予算ながらも作り込みが上手い。効果的に使われるサイドミラーやトラック無線。
カメラワークや音楽のセンスなど、どれを取ってもプロのお仕事を感じさせてくれます。『ヴァイブレータ』と言う
一見過激でキャッチーナなタイトルに引いて、見過ごしていた貴女!◎のお薦めです。
冷え込む日の夜に、ホットレモンでも飲みながら観るのも悪くないかも。
ヴァイブレータ
初めて読んだ、赤坂真理。
彼女の作品の中でも割と評価の高い『ヴァイブレータ』から読んでみました。
実際どうなのかはわからないけど、村上龍に影響受けてるんじゃないかなってちょっと思った。
この小説は、男よりも女の方が、圧倒的に共感・共鳴できる小説なんじゃないかなって思う。
その証拠に、この作品に対する絶賛のリアクションの多くが、女性からのものだったらしい。女性が抱える「病み」みたいなものを非常に上手く描いている。
女性は是非一度。