吹奏楽決定版101
インストロメンタルが好きな母にプレゼントしました。マーチ、映画音楽、クラシックとありましたが、どれも知っている曲が多くてとても良かったです。母も気に入ってくれました。母はちなみに82歳になりますが、若いときからレコードを買ったりしているほどで、気に入ってくれるか心配でしたが喜んでくれたのでほっとしました。私も聞きましたが良かったです。お気に入りの一つになりました。
あの日、パナマホテルで (集英社文庫)
1986年、アメリカの西海岸都市、シアトル。妻を失った中国人ヘンリーはかつての日本人街にあるパナマホテルの地下室で44年前の思い出の品を見つけました。日本人少女ケイコとの引き裂かれた苦い恋の思い出でした。
日本軍による真珠湾攻撃の翌年にヘンリーとケイコはシアトルの私立の白人中学で出会います。双方の親がふたりをアメリカ人として育てるために通わせていたのです。戦況が厳しさを増すとアメリカ政府は日系人12万人を中西部へ連行し、砂漠の有刺鉄線に囲まれた収容所に抑留します。ヘンリーは協力者を得て収容所までケイコに会いに行き「ずっと待っている」と約束しますが、戦争が終わってもケイコは戻って来ませんでした。
埋もれつつある史実、アメリカ国籍でありながら敵国人として迫害され、ついには全財産を失って強制収容所へ送られた日系人の歴史を作者は克明に再現して見せてくれます。高まる排日運動を詳しく描くことで幼い恋のはかなさと純粋さがいっそう際立っています。ヘンリーはケイコを守るために親と対立し、抜き差しならぬところまで追い込まれます。二人の恋を妨害することになる「親と子の絆」、「民族のアイデンティティ」を丁寧に書きこんでいるところがリアリティを高めています。
「フィクションである」と作者は断わっていますが、読み進むうちに「これはフィクションではない、ヘンリーとケイコと同じようにあの戦争によって生活を蹂躙され、人生を翻弄され、悲しい思いをした人々が大勢いたのだ」と容易に想像することができました。迫害を受けながら、気高くも潔く生きる日系人の姿を描写することでアメリカ政府へ静かな抗議を示す作者の姿勢が印象に残りました。登場人物、とりわけヘンリーとケイコがとても魅力的に描かれていて読みながら二人を応援してしまいました。
最後の1ページ、湧き上がる感情を抑えられませんでした。多くの人に読んでいただきたい秀作。私がこの数年に読んだ恋愛小説のベストワンです。