ジュリアン・ブリーム大全集
ジュリアン・ブリームが60~80年代にかけてRCAに録音したもののほとんどすべてを収めた全集である。そのためたとえばロドリゴの「アランフェス」が3枚も収められているのでマニア向けではある。
ブリームが円熟していた時期の演奏だけに文句のないものばかりだ。
一聴してブリームとわかる独特の音色と抜群のテクニック。
ただしリュート演奏については、古楽器が定着した今となっては古さはかくせない。ご愛敬と思った方がよいだろう。
80年代に交通事故に遭ってから、右手の動きが見ていても痛々しいときもあったし、後遺症で97年の来日公演も中止になったまま、最近引退をしたようで大変残念である。
すばらしい若手ギタリストが続々と登場するなか、もう一度ブリームの先駆者としち?の役割を認識するのも大切なことだろう。
RCA以前、50年代のウェストミンスター時代の録音は全くCD化されていないのでぜひCD化を進めて欲しいものである。
超絶のギター・デュオ
20世紀を代表するクラシックギター奏者のブリームとジョンによるギターデュオの世界。CDは2枚組でエリザベス朝のリュート曲、古典ギター、スペインもの、フランス近代音楽の編曲まで実に多彩だ。しかも世界的名手による演奏でギター二重奏のすばらしさ、楽しさを感じさせてくれる。2人の個性の違いも際立っており、音色も特徴がある。私にはジョンはクラシックギターの王道をゆく温かくて太い音(セゴビア直系?)、ブリームは繊細で変幻自在の音色のように思われる。細かい解釈やテンポもあえてぴったりあわせていないが、そこにまたデュオとしての味わいがある。私が好きなのは、カルリのロンド、ファリャのスペイン舞曲、そしてフランス近代音楽の編曲ものだ。特に聞きものは、フォーレのドリー、ドビュッシーのゴリウォークのケークウォークだ。2人の演奏を聞くと原曲のピアノよりギターが良いと思わせる。その最大の要因はブリームの巧みなアレンジと多彩でユーモアあふれる演奏スタイルである。音を聞くだけで2人が心から楽しんで演奏している姿が目に浮かぶようだ(そういえばYouTubeに2人の演奏がアップされていた)。この演奏こそクラシックギターによる最高のエンターテイメントだ。