天国への階段〈上〉 (幻冬舎文庫)
こんなに泣いた本は久しぶりです。ただのハードボイルドやミステリーだと思って読むととびっくりしますよ。これは復讐小説であり、最上の恋愛小説でもあるのです。男のロマンに酔いしれてしまいました。生涯忘れ得ぬ一冊です。著者に感動をありがとう、といいたい。
天国への階段〈上〉
連ドラ見て失望しちゃった人には、特にお勧め。
ドラマで疑問だった設定は原作に無いものばかりだし(本橋一馬の恋人とか、児玉と圭一・妻の不倫とか)。
でもこの本を読んで改めて、佐藤浩市と古手川祐子の配役はピッタリだと思った。
天国への階段〈中〉 (幻冬舎文庫)
父親と牧場、そして最愛の恋人をも奪われ、失意の元に北海道を後にし、上京した柏木圭一郎。26年の歳月がたち、実業家として財をなした柏木は、彼からすべてを奪った江成への復讐劇を開始する。しかし、財をなすために犯した罪が、思わぬ形で追求をうけることになり、柏木自身も追いつめられていく。
中巻では、家のために自分を捨てた亜木子を26年たっても恨みきれない柏木と、26年間柏木への罪の意識を持ち続けた亜木子が、絵笛で劇的に再会する。一方桑田らによる捜査が徐々に柏木の元に迫る。
2001年はじめに出版された本作品、話題を呼びベストセラーとなり、日本テレビ系列でドラマ化もされたが、年末のこのミスで15位、文春で20位と、評価は今ひとつであった。
しかしながら、私個人にとっては、「模倣犯」「邪魔」に続くベスト3であった。
なにぶんにも量が多く、一気に読むというわけにはいかないが、復讐劇に恋愛劇も絡まり、ページをめくる手が止められなくなる。
本作品のポイントは「血のつながり」と「タイミング」である。ほんの小さなタイミングのずれが、いくつか重なると、人生は周りの人をも引き込んで、予想し得ない方向に進んでいく。そして、天国への階段を誰と上ることになるのだろうか?
天国への階段 Vol.1 [DVD]
DVDで一気に全話見たが、登場人物のそれぞれが重いものを背負った近年珍しいシリアスドラマ。それぞれのストーリーが丁寧に作り込まれていて見応えは充分、テレビドラマというより長編映画を見ているような印象を受ける。
俳優陣もすばらしく、佐藤浩市の奥の深い厚みのある演技は勿論のこと、個性豊かなキャラクターのなかにあってひときわ異彩を放つ津川雅彦、大塚寧々の寂しい女ぶりも実に切ない。新人の宮本真希も鮮烈だ。が、なんといっても個人的には加藤雅也の「児玉専務」萌えなんである。柏木の右腕としてストイックな辣腕ビジネスマンでありながら隠すに隠せぬ裏の顔。柏木のために人知れず自らの手を汚すときの、端正な顔が修羅と化すその一瞬。派手な流血場面がないぶんむしろ眼差しに宿る凄みが尋常でない。衣装ひとつとっても、一見地味なスーツに見えてシルエットがやっぱりクロウトだったり、さりげにゴツいシルバーのリングが指に光っていたりで裏の社会を歩いてきた男を匂わせる演出は心憎い。9話目で、ひとり死地に赴く前に柏木に煙草を貰い極上の笑顔を見せ、しかるのち背筋をのばして出てゆく姿はヤクザ映画の王道だったりするが、ツボを心得た演出はさすが。(しっかしありえねーあんな専務、のツッコミはこの際なし)奈緒子との絡みでも抑えた切ない表情が胸を衝く。
演じる加藤雅也の言葉通り「記憶に残るドラマ」になってしまった。
惜しむらくは、テーマソングとも言うべきツェッペリンの「天国への階段」が著作権問題か使用されず、DVDではクラシックに変えられていたことだ。
「モルダウ」は大仰だし、「くるみ割り人形」はあわないと思うなぁ。。。
なので1コ減点で星よっつ。