北神伝綺 (下) (角川コミックス・エース 125-2)
現政権に迫害され絶滅寸前の先住民「山人」をめぐる柳田國男と兵頭北神。
山人に誘われたことを「選民のしるし」のように繰り返し自著の中で語っていた柳田。
軍国主義の風潮への迎合のために自説を捨てた柳田、国内・台湾での山人狩りに協力した柳田は、なお子供の頃に出会った山人を追い求める。
山人の父を持ち、柳田の山人殺しを黙認していた北神は、柳田に破門され学会から追放された後も、柳田の下っ端仕事を引き受ける。
両者とも不可解な過去を持ちながら、特段それを重荷とすることもなく生きている。
「サイコ」の低体温と、「木島日記」の混沌感の根がここにある。
北神との異父妹・滝子について情報が少ないのが残念。BR>イザナギ・イザナミのモチーフも意味深。
北神伝綺 (上) (角川コミックス・エース)
主人公・兵頭北神は、柳田國男が自ら封じた民俗学の暗黒面「邪学」を継承する人物である。柳田國男をはじめとして、宮沢賢治、竹久夢二、伊藤晴雨など、日本の歴史に名を刻んだ人物が登場し、「山人」を巡って話が展開していく。姉妹作品である『木島日記』と同様に、独特の世界観を持っており、不思議な魅力を持った作品である。
ちなみに、この兵頭北神という人物は、『MADARA天使篇』に登場する兵頭沙門の養父である。この作品を見ると、なぜ沙門が狂ってしまったのか解る気がする。
木島日記 上 (角川コミックス・エース 125-3)
絵だけでは何が起きているか不明すぎるので
キャラクター小説なるものも必要となったのだろう。
併せて読むことにより多義性は失われたが
まあ、面白かった。
北神伝綺 (下) (ニュータイプ100%コミックス)
今回は甘粕正彦、出口王仁三郎、北一輝、江戸川乱歩らが登場して著者の「偽史」を彩る。第伍講「異郷考」の最後に李香蘭の名が出てくるが、彼女を登場させたら話の展開はもっと面白くなっただろう。著者はあとがきで「これは物語であり、歴史ではない。物語の中にのみ生きうる妄想がある」と述べているが、やはり引退しているとはいえ、ご存命の方を登場させるのは気が引けたのだろうか。