エル・ネグロと僕―剥製にされたある男の物語
非常に若々しい文章で始まります。
著者は19歳の時、友人とヒッチハイクでスペインの片田舎バニョレスにたまたま立ち寄ります。
彼を乗せてくれた地質学者が別れ際に「君たち文化に興味があるんだろう。それならバニョレスには立派な博物館があるよ。この州で一番古い博物館で、小人の黒人の剥製で有名なんだ。」と告げます。
そこで彼は入場料50ペタセを払い、黒人の剥製を観て、絵はがきを2枚買います。
その後、フリーのジャーナリストとして「エル・ネグロと僕」を執筆します。
スタートは大学で熱帯農業を専攻し、「うんと優れた開発援助専門家になってやる。」と意気込んだ著者が
支援に疑問を持ち、黒人の剥製の意味を問い始めたことに私は興味を持ち、読んでみました。
良識のある人は「テロリストは何故NPOの人まで襲うのでしょうか。」と声高に言うあれです。
カタカナの固有名詞に溢れ、舞台も年代も混在し、頭の中が未整理ですが、
18世紀から20世紀初頭までアフリカを訪れた白人は黒人を人間とは考えていなかった。
狩猟の対象にさえしていた。
黒人を標本として一つの樽に爬虫類と一緒に塩漬でヨーロッパに送っていた事は分かりました。
終盤の「祖父の地で」で開催された「対立と和解」討論会は圧巻です。
混迷を続けるアフリカですが逆人種主義が起きることも頷けます。
エル・ネグロの顛末も奇っ怪ですが、剥製そのものにも考えさせられました。
アフリカ関連では「ルポ資源大国アフリカ」に継ぐ2冊目ですが、
「ルポ資源大陸アフリカ」と比べ、非常に情緒的な本でした。