ドビュッシー:ピアノ作品全集
最高の全集です。
旧録音に聴かれた華やかな煌めきやスピード感、テクニックの抜群の冴えは影をひそめ、
音色の透明感はいっそう美しさを増し、
抑制されたタッチと絶妙のペダリングがドビュッシーに新しい響きを与えています。
フランソワの演奏を油絵、ミケランジェリを水彩画とするなら、ベロフの新録音は水墨画と言ったところでしょうか。
現代スペイン読本 知っておきたい文化・社会・民族
スペインという国ってどんな国だろうって、思った時にこれが重宝します。大学や何かの講義の教科書にも使えるらしいので、スペイン文化を凝縮したような本です。
ただ、活字ばかりでおもしろくないので、写真や挿絵を多くしていただけると読みやすくなります。歴史についても触れているので、わざわざ歴史本を買わなくてすみました。
本が好きな方、近々留学や旅行をする人などに最適です。
スペイン入門書みたいなものですね。
セゴビアの芸術
音楽好きな父への誕生日プレゼントを何にしようか迷っていたところ、このCDを主人から薦められたのでとりあえず購入してみましたが、家族も皆で心地よく聴き入ってしまったほど良いCDでした。父もとても喜んでくれたので、本当にいいものにめぐり合えた感じです。
アガサ・クリスティーのミス・マープルDVD-BOX4
本シーズンからミス・マープル役を務めるジュリア・マッケンジーは、解説書によると、歳よりも随分若く見えた前任者ジェラルディン・マクイーワンより、何と9歳も若いのだそうだが、前任者よりは、随分と老けて見える。ことミス・マープルに限っては、この老けて見えるということが大事であり、映画・テレビ上の歴代の5人のミス・マープル役の中では、ジョーン・ヒックソンに次ぐマープルらしいマープルの誕生といっていいと思う。解説書によると、マッケンジーは、自分なりに練ったマープル像を、「ジョーン・ヒックソンのイメージに少し戻し」、「キャラクターについては、マクイーワン版とヒックソン版の中間を想定した」と語っているのだが、その方向性は妥当だと思うし、本シリーズの特徴である出しゃばり過ぎるマープル像の責任は脚本や演出にあり、マッケンジーにはないという前提に立てば、その目論見も成功していると思う。
さて、本シーズンには、前シーズン同様、マープル物、ノン・マープル物が、それぞれ2作ずつ納められているのだが、本シーズンの特徴を一言でいえば、原作に忠実なマープル物に対して、原作に大幅な改変を施したノン・マープル物ということになるだろう。
マープル物の「ポケットにライ麦を」は、重要な登場人物のうち省略されたのは、レックスの義姉ラムズボトムだけであり、このラムズボトムの役を、料理人のクランプ夫人に割り振っている。また、原作では出番の少ないマープルの出番を、ニール警部やランスの役割を一部割り振ることによって大幅に増やしているくらいで、最初からラストの結末のシーンに至るまで、原作の改変が目立つ本シリーズでは珍しいほど、原作に忠実に作られている。
同じくマープル物の「魔術の殺人」も、一部の人物設定・役割分担や一部の被害者・犯行方法の変更、幾組かの男女関係の追加など改変は施しているものの、それらは、あくまで細部の改変の範囲内にとどまっており、プロット自体は、驚くほど原作に忠実に作られている。
ノン・マープル物の「殺人は容易だ」は、単にノン・マープル物をマープル物に変えたというだけでなく、その改変振りが、とにかく凄い。登場人物の人物設定・人間関係が大幅に変えられているのはもちろんのこと、被害者までもが変えられており、その結果、全体のプロットも、原作とは大きく変わったものになっている。一言でいえば、「泣かせ」を狙った改変であり、人それぞれ、その評価は賛否両論あると思うが、私は、シンプルかつ良く出来た構造の事件の真相に加えて、ロマンスのどんでん返し付きの面白い原作を、やたらと込み入って分かりにくいだけのチープな作品に変えてしまっているだけだと思う。ただでさえ分かりにくい改変のうえに、場面転換・物語の進行が付いて行けないほど早過ぎるので、どれだけの人が一時停止なしの一度見だけで、この事件の全体像を理解できるだろうかと思ってしまう。
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」もノン・マープル物で、「おしどり探偵[完全版]DVDーBOX2」に収録されている同名作品に次いで、2作目の映像化作品となる。本作は、登場人物の設定変更に加え、原作にない登場人物の追加、「泣かせ」を狙ったプロットの大幅な変更と、「殺人は容易だ」と同様の特徴を有している。「おしどり探偵」の方は、ほぼ原作に忠実だったのだが、ただ、それで良かったかといわれると、完全版で何と3時間以上も掛けており、正直いって、あまりの長さにうんざりさせられてしまったものだった。両極端に走った両作品であり、原作への忠実さと独自の改変のバランスを取って良い作品に仕上げるのは、なかなか難しいものなのだと痛感させられた両作品ではあったのだが、これは、本作の方に軍配を上げたい。