1900年 (2枚組) [DVD]
遂に「1900年」が、発売とは!
感無量とは、この事ですね。
ベルトリッチで「歴史大河ドラマ」というと一般には「ラストエンペラー」の方が有名でしょう。
しかし、やはり祖国を舞台にし自叙伝的要素も濃いためか、作品の質の高さ、そして何よりストーリーの面白さも本作の方が遥かに上です。
本作は上映時、5時間半の一気上映という異例の方法が取られ話題になりました。僕も見に行ったのですが、前編で、余りの面白さに興奮し後編の上映開始までの休憩が、もどかしく感じられるほどでした。
本作は、その長さの為か再上映も無くTVでもやらず、ソフト化もされませんでしたので久々に見れるだけでも感激です。
ビスコンティの「山猫」が好きなら必携です!本作と合わせイタリア近・現代史が完璧に分かります(笑)
実は、僕が期待するのは、上映当時の映倫のせいで重要なシーンが「モザイクだらけ」で怒りすら沸いたのですが、多分現在なら無修正でソフト化されるのでは、と言う点です。
それが実現すると正に国内初の「完全版」を見れるわけで感涙物です!
兎に角、同時発売の「暗殺の森」と合わせ映画ファン必携の大傑作である事は補償します!!
暗殺の森 [DVD]
タイトルでそのように書いておいてナンですが、それでも「美しい」と言わずにおれない作品です。
ど素人ながら「光と陰が〜」などなどと…
カットの最初が絵画的であったり、イメージボードのままなんだろうなと思うものは多数ありますが、この作品を観て「動画でいうところの絵画的」ってのはこういうことなんだろうなと。
ただ、観ただけで納得させるのはすごいことだと
物語は、すべてから逃げるへたれ男の話として楽しめました。
暗殺の森 Blu-ray
高い評価のレビューが多いこと、映像美の作品であるらしいこと、個人的に気になる俳優さんが出演していること、で購入。
はたして映画ド素人、かつ歴史に疎い私に、理解できるのか?・・・と不安はあったが、映像はド素人が見ても鳥肌が立つほど美しかった。まるで動く絵画。ローマやパリの外観も内装も趣のある建物。出演者の個性的な美を際立たせる衣装。光と影。
美しすぎる映像と、政治的思想が絡むストーリーに、ド素人は身構えてしまうのだけれど、実は物語は普遍的で、「正常な」人生を求める青年が、時代に翻弄されてしまうのだった。
美しい映像は、ロケーション撮影が多い割に狭くもあった。一因は人工物の多さかもしれない。きちんと整備された都市。懺悔するための小部屋や電車のコンパートメント。広い室内はわざわざ区切られたりして、なんだか狭い。屋外でも、何らかの「格子」が画面の上から下まで貫いていたりするので、マルチェロは檻の中にいるかのよう。暗殺が行われる森でさえ、針葉樹らしい長い幹は空まで続く広大な牢獄のよう。
物語中、この牢獄の「外部」にいるのは、吠える犬や、音楽を奏でる浮浪者くらい。一方、いくつかの室内は不必要なまでに広く、マルチェロの父親が入院する精神病院など無限に広く見えて不安感を煽る。
マルチェロが「正常」でありたいと強く願うようになったきっかけは、幼い頃ホモセクシャルの運転手リーノに悪戯されかけ殺してしまった思い出である・・・という解説が付属の小冊子にあったが、私にはその前の「いじめ行為」が真のきっかけに見えた。
だけど幼い少年は、「集団で取り囲んで服を脱がす」行為を「異常」だとは思わずに、そんな目に遭う「自分」をこそ「異常」だと思うらしい。リーノを糾弾し、彼を殺した自分を懺悔するマルチェロ、集団を糾弾したり、集団に懺悔を求めることは、しない。
この場面、少年がリーノの「長い髪」と「銃」に触れるのが印象的。リーノの「女性性」と「男性性」。
『昼顔』でもそうだったが、なんでこういう「揺れ動く」役柄が似合うんだろう、ピエール・クレマンティ。
美しすぎる牢獄をつくったのは「群衆」に怯えるマルチェロ自身。
彼が恐怖するのは、「群衆」特有の、「個」を失った、まるで植物のような「大きな意志」。
・・・と(勝手に)仮定してみると、無教養かつ俗物であると見下していた新妻ジュリアが、ダンスホールで堂々と女性同士で踊り、あまつさえ「群衆」を先導し外に飛び出していくシーンは、かなり面白い。内側に留まり困惑するマルチェロ、渦のような「群衆」に囲まれて身動きがとれない。なぜ妻は受け入れられ、自分は排除されるのかが、彼には理解できないのだ。
「群衆」は「個」になるや、やおら異常性を見せるのも面白い。マルチェロの両親、同志、反ファシズムのクアドリ夫妻、みんなどこかおかしい。「正常である」ことが「多数派である」ことなら、マルチェロはあまりに「正常」すぎるからこそ「異常」って、なんだか皮肉な世界観。
当然のことながら、撮影するカメラも、牢獄の「外部」に存在していて、優れた映画を創造する才能も一種の「異常」な行為、もちろんそれを喜んで観ている観客たちも・・・と考えてみると、「正常」なマルチェロは、ほんとうに孤独なのだった。