ニュー・トニー・ウィリアムズ・ライフタイム
いまは亡きトニー・ウイリアムスが第1期「ライフタイム」を解散し、新メンバーを加えて再結成した「ニューライフタイム」による記念すべきファーストアルバムです。1975年発表。メンバーはソフト・マシーンから引き抜いた形になったアラン・ホールズワース(ギター)、アラン・パスクァ(キーボード)、トニー・ニュートン(ベース)という黒人2名、白人2名の混成チーム。2004年にデジタル・マスタリングされたうえに、未発表バージョン2曲がボーナストラックとして加わり再プレスされました。
オリジナル盤に関しては、多くの人がレビューしてるのでここでは割愛しますが、注目の的は何といっても2曲のボーナストラック。「Celebration」はまったくの未発表で、このアルバムの中では大変異色なファンキーな楽曲。その意味では次作「ミリオンダラー・レッグス」の作風に似ています。ファンクなリズムに合わせてギターのアラン・ホールズワースが懸命にソロをとっています。実は海賊盤でもこの曲を聴くことができるのですが、オフィシャル音源としては、もちろんこのアルバムでしか聴けません。もう1曲の「Letsby」はタイトルだけ見れば新曲のようですが、オリジナル盤収録の「Mr.Spock」の別テイクです。オリジナルと違ってかなりラフなプレイで、ホールズワースもかなり荒々しいソロを披露しています。
ボーナストラック2曲のためにこのアルバムを買うかというと、その人の金銭感覚にかかっていますが、デジタル・マスタリング効果は絶大で、オリジナル盤では聴き逃してしまうトニー・ウイリアムスの細かなテクニックに改めて気がつかされました。新規購入の方にはこちらをお勧めしますし、買い替えを考えている方も決して損することはないと思います。
セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン
マイルス・デイヴィス (Miles Davis 1926年5月26日〜1991年9月28日) は、アメリカ合衆国イリノイ州アルトン生まれのジャズ・トランペット奏者。クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フュージョンなど時代を先取りした音楽性でジャズ界を牽引する。音楽の活動期間も1940年代、50年代、60年代、70年代、80年代と長く、どの年代も同じものがなくクリエーターとしての手腕もずば抜けていた。アルバムは1963年4月と5月の60年代前半の録音となる。共演者は#1,3,5がピアノがヴィクター・フェルドマン、ベースがロン・カーター、ドラムがフランク・バトラー。#2,4,6はテナー・サックスがジョージ・コールマン、ピアノがハービー・ハンコック、ベースがロン・カーター、ドラムがトニー・ウィリアムス。この様に二つの違った音質のユニットが収録されている、一方は西の名手「Seven Steps To Heaven 」の作曲者でもあるヴィクター・フェルドマン。一方は黄金クインテットとよばれるメンバー、この頃のマイルスは自分を伸ばす為、触媒になってくれたり、起爆剤になってくれる人選をしている。黄金のクインテットの三人がマイルスを更なるステージに飛躍させるとはこの段階では想像できなかった。止まる事を知らないマイルスの一端がうかがえる逸品といえる。
(青木高見)
アンド・ザ・クール・サウンズ
いわゆるオムニバス盤ではないのだが、別々の時期に、別々のメンバーでの演奏を一枚のアルバムに集めてある。1-4曲目はゲッツにシェリー・マン(ドラム)を含むワンホーン・カルテット。5,10曲目はバルブ・トロンボーンのボブ・ブルックマイヤーを加えた2ホーン。6,7曲目にはトランペットのトニー・フラセッサが加わっている。フラセッサはリーダーアルバムをわずか4枚だけ残し、ヤク中で42才の若さで死んだが、一瞬のきらめきをこのアルバムに残している。ワンホーン、2ホーン、それも、トロンボーンが加わったり、トランペットが加わったりしているが、基調は、とにかく聴かせる「ゲッツ節」。ゲッツの聴かせかたのうまさをゲッツ嫌いは「あざとい」「うますぎる」などと言うが、ゲッツの「歌い方」のうまさはリスナーをぐいぐい「ゲッツ・ワールド」に引き込む。録音は53年から56年にかけてだが、リマスターの状態もいい。この価格だったら買いです。(松本敏之)
モントルー・ジャズ・フェスティバル1972 [DVD]
みなさん若い。チックが31歳、トニーが27歳、スタンリーは21歳。そしてスタン・ゲッツは円熟の45歳。チックのオリジナル曲で終盤盛り上がっても余裕でしきっている。
画質は72年の撮影であることを考慮すると、かなり良好。音も最初スタンリーのアンプの調子が悪い瞬間があるが、総じて各楽器の音がきれいに拾えており、5.1chサラウンドを十分楽しめる。
他のレビュアーが書かれているように、トニーの演奏が印象的。スタンリーのアップライト・ベースでの確かなテクニックも聴き応えあり。チックはM3だけアコースティック・ピアノで他の曲はエレピ。チックとスタンリーが揃うとほとんどRTFだが、スタン・ゲッツをたてる所はたてて、調和のとれた熱演が繰り広げられる。
簡素なステージ、出演者の衣装等、70年代初期の気配が濃厚に立ち込めており、感慨深く視聴することができました。