インドで考えたこと (岩波新書)
インド旅行記の古典である。多くの人たちに影響を与え、アジアに中での日本、世界の中でのアジアについて、深く考えさせてきた本。これを読んでインドに旅した人は数えきれず、無数の類書を生み出してきたことでも知られる。
アジアへの関心を持つ人なら、かならず読んでおかなければならない本だろう。それだけのインパクトと価値がある。
ただ、刊行から50年以上を過ぎた2008年という時代になって読んだ私は、「まあ、普通かなあ」という感想を抱いてしまった。書かれている内容が、もはや当たり前のものとなってしまっているのだ。インド世界の特殊さ、イギリス支配の残滓、日本との違い。いずれも、当然ものとして認識され、驚きに欠けるのだ。
これが50年間での「進歩」なのか。あるいは、いまもなお状況が改善されていないことを嘆くべきなのか。色々と考えさせられる読書体験であった。
時代の風音 (朝日文芸文庫)
堀田、司馬といった博覧強記の作家の二人に「書生」として宮崎がからむという構成。内容は哲学、文学、絵画、西洋と東洋、アニメそして歴史と内容は華麗に飛び跳ねる。20世紀末に行われた鼎談を21世紀初頭の今から読むと、彼らの恐るべき推察力、特にこの国の未来の姿をあらわす的確さに舌を巻く。宮崎アニメはほとんど見ているし、司馬の本もある程度読んでいるが、堀田は路上の人以外は読んでいない。楽しみがまた増えた。
方丈記私記 (ちくま文庫)
平安末期から鎌倉にかけての天災、動乱、飢饉、東京大空襲の焼け野原、そして今回の東日本の大震災。支配階級と被支配者の果てしない距離。常に反省、検証することなく同じ過ちを繰り返す日本人。何ひとつ本質的には進歩していない2011年の日本は悲しい。