リスボン特急 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]
ペール・ブルー(蒼白)の映像に彩られたフィルム・ノワールの秀作。
A・ドロンは、非情で冷徹な警察署長。
彼が所轄する街に日常茶飯事のように映し出されるのは、銀行強盗、売春婦殺人、男娼による盗み、覚せい剤取引、街で体を売るゲイボーイの密告屋。
常連のナイトクラブで、A・ドロンがくわえ煙草で粋にピアノを奏でる。このシーンに登場するカトリーヌ・ドヌーブが圧倒的に美しい。クール・ビューティーそのもの。
彼女は残酷なまでに美しく、危険な香りがする。
ドロンもドヌーブも、画面に出てきただけで、その美しさで見ているものをうっとりとさせる。これぞ映画の醍醐味、映画スターの魅力。
フランスが誇った美男美女には、香りがある。
リスボンへ向かう特急での強奪シーンは、CGが無い時代のアクションシーン。
こういう「間」を楽しむのも、映画を見る楽しみ。
ラストも、ドロンの冷徹さが胸に響く。
かえって、犯人の方が情がある、という所が皮肉。
音楽も映像もスタイリッシュな作品。
リスボン物語 [DVD]
録音技師ウィンターは映画監督の友人にリスボンに呼び出される。待てど暮らせど戻らぬ監督。ようやく出会えたと思ったら,自分の目を通して撮った映像は死んでしまうからと撮影を止めていた・・・。
ヴェンダース自身の,映画の原点に立ち返ろうとする心の軌跡を描いたような作品。マドレデウスの限りなく澄んだ音楽とリスボンの眩いばかりの景色が,光と影を行き来する映画世界を心地よいものにする。
本作を観終えた時,魂が吹き込まれたのは彼等だけではなかったことに,きっと気付くはず。
津波災害――減災社会を築く (岩波新書)
3.11東日本大震災が発生する直前に出版された本。
津波災害に関する自然科学、社会科学、実践科学がバランスよく書かれ、まさに3.11の津波発生時の避難行動や今大変な状況にある被災地や、ようやく復興に向けて動きつつある行政と重ね合わせてみると、様々な課題が浮かび上がってくる。
まず著者が繰り返し述べているのは、津波とは波ではなく「流れ」であるという。すなわち、いくら堤防や護岸を作っても大量の海水の前進があるのでいとも簡単に破損してしまう。
もし10メートルの津波がやってきたら、どのような護岸や堤防も乗り超えて背後の市街地に津波氾濫が起こる。
また、再三の津波に襲われている三陸であっても、災害後に高地移転などを試みているが10年も経つと大半が元の集落に戻ってしまう。今の東日本大震災後のマスタープランもよほど生活する人々のことを考えたものとしなければ、同じことを繰り返してしまうのではないかとも思える。
そしてさらに考えておかなければいけないのは、東海・東南海・南海地震である。いずれも、今後30年以内に発生する確率は50〜90%と高いものとなっているし、プレート境界地震であり必ず起こるものである。
とすれば、東日本大震災を教訓とし、いち早い復興とともに考えなければならないのは、大災害への備えと被害を最小限にとどめるための対策である。
本書は、それらについても詳しい。特に、東京で大津波が発生した場合のシミュレーションとなると、避難民の行き先が心もとない。なんと100万人単位での避難民が発生し、広域避難に伴う課題が様々に発生するという。
歴史をさかのぼると、津波により滅んだクレタ島のミノア文明、ポルトガルが弱体化するきっかけとなったリスボン大津波など、津波とともに衰退していった国もみられる。
津波に加えて原子力発電所の被災という未曾有の大災害に日本はあえいでいるが、いまここでしっかりとした国民意識を高めて、災害に強い国として生まれ変わり、次の震災に備えておきたい。
7月24日通りのクリスマス [DVD]
日本のラブコメディというのは、演じる側も観る側も何か気恥ずかしいものだ。だからラブストーリーは山ほどあるが、ラブコメは意外なほど少ない(TVドラマではたくさんあるけど)。ハリウッドでいうとメグ・ライアンやジュリア・ロバーツ、リース・ウィザースプーンあたりの十八番だが、日本ではそれに合致する女優が少ないのも要因だろう。でも今回の中谷美紀は良かった。演技が上手いので何をやってもサマになるのだが、ファッションモデル顔負けの美貌を隠してモテない女性を演じても、それはそう見えるのが凄い。同じことは上野樹里にもいえたけど。大沢たかおと長崎は「解夏」の悲しいイメージが強かったが、今回はコメディの中でひとりだけカッコいい演技で笑わせてくれる。いつもヌケている佐藤隆太や、YOUから「数珠」といわれた(映画参照)小日向文世も最高だ。また野波麻帆や平岡佑太といった本来主演級の俳優たちが1〜2ショットだけ出ているのもお見逃しなく。気軽に観るのにオススメです。
ベスト・スピリチュアル100
時代ごとの宗教音楽の傑作選となっており、選曲がすばらしいです。知らなかった多くの曲を知るきっかけとなりました。
私がよいと思ったのは、《プーランク:われらは主をほめ、主を崇め〜グローリア ト長調P177より》、《ブリテン:羊飼いのキャロル(アカペラ・コーラスのための)》、《ロイド・ウェバー:ピエ・イエス〜レクイエムより》などです。