こころ (新潮文庫)
「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部構成です。
高校生の頃現代国語の教科書でお馴染みの作品。当時教科書で取上げられていたのは「先生と遺書」の抜粋でした。
第3部が作品の中で一番ドラマチックな部分だからでしょう。ただ、登場人物"K"の自殺や襖に飛び散った血の跡、
下宿の"お嬢さん"を"K"を出し抜く形で妻にしたことで友人の自殺という結果をもたらしてしまったという思い込み
を抱えたまま生きる屍となった"先生"・・これらは当時の私に「暗い作品」というイメージを与えました。
改めて「こころ」をきちんと読み直すことで作品に対して深い感銘を受けました。
作品の舞台も漱石の生きた時代も「明治」です。
作品の中では明治天皇が崩御し、殉死という形で乃木大将は人生に幕を降ろします。
"先生"もまた自身の命を賭して贖罪します。
そこには、明治という時代を作った人間の力とその時代に育まれた人間のこころを読み取ることができます。
登場人物は自分の信念・生き方に「真面目」であり、現代にはない力強さを持っていました。
暗いニュースが流れる昨今、私達も先人から学ぶべきことはたくさんあるようです。
人間の心は本当に弱く移ろいやすいものだと身につまされる思いがする一方、心が命ずるままに行動するのではなく
自分を律する強い心を育てなければと感じた作品でした。
人間失格 [DVD]
生田さんが好きで、一回目は見て2回目は、生田さんというより作品の素晴らしさに感動しました。特に森田さん演じる中原中也との会話で、桜が画面いっぱい舞落ちるシーンは圧巻です。もう一度機会があれば見たい作品です。生田斗真さんが、初めて映画に出て初主演でこの難しい作品で、精いっぱい演じています。これからの生田斗真さんという役者さんに期待出来るものだと思います。まだ拙いところはありますが、本当に久しぶりに、心の底から感動し心を揺さぶられた作品でした。森田さん演じる中原中也との少ないシーンも心に残っています。久々に心にずしんと残る映画でしたので、そして本当に綺麗に丁寧に作られている作品だと思います。生きる力をもらった作品でした。
人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))
「本当に良い小説とは分かりきったことを書いたものである」
みたいな(うろ覚え)名言がありますが、この作品が正にそれだと
いうことは、このレビューでの共感の多さからも窺い知れるかと思います。
人間の中で生きにくさを感じ、日々張り詰めている。
それを、誰かがかつて経験したと知っただけで、
若干、思春期が生きやすくなりました。
大人になって再び取り出してみましたが、生活の為に止まることが
許されない今は、生身の心で没頭するには余りに危険すぎました。
活力になる作品は、日々変わっていくのでしょう。
でもそれでいいのです。「人間は失格することもある」という事を
忘れないように、常に傍らに置いておけばいいのですから。
人間失格 3 (BUNCH COMICS)
最終巻ということもあり、全3巻中最も引き込まれました。特に後半の主人公葉蔵が堕ちていく様は、原作と違い漫画という媒体だけあって容赦ない描写がされており、圧巻です。人間失格は、原作が優れているだけに、それをアレンジした多くの作品は駄作と化す傾向にあると思われますが、この人間失格は一つの作品として成立しております。
しかも、傑作です。
古屋兎丸先生の才能に感服。