骨董をたのしむ (38) (別冊太陽) 昔きものと遊ぶ
ネットオークションでも街中でも古い着物を多く見かけるようになった。値段も手ごろだし柄も可愛いし、若い娘たちの間でもブームの兆しという。この本では「わぁ綺麗!」という着物だけでないいろいろな表情の着物をみることができる日本の文化や技がどんなに素晴らしいものだったか知ることも。華やかさはないけれど、この本にでている「昔きもの」ができた頃へ想いを馳せ、作った人のときめきを感じることもでき、とても豊かな気持ちになった。巻頭の樹木希林さん親子のページも「昔きもの」へのお洒落で実践的な寄り添い方として学ぶものが多い。
333のテッペン
東京タワーのテッペンで死体が発見されるところから、物語は始まります。
333のテッペン、444のイッペン、555のコッペン、666のワッペン の短編4つのミステリー小説。
それぞれに完結はしつつ、順番に読むと一冊の本になっていますよ。
作家 佐藤友哉 さんの世界を味わう小説ですね。
ちょっと表現がグロいところありますが、
佐藤さんの他の小説にくらべれば、ずいぶん抑え目w
(表現としてですが、皮をはぐ、肉が腐る、、、)
内容は、世の中を、普通な社会を見下し、斜めにみて、
そこで起こる殺人事件さえも「素人の仕事」とみる主役の男26歳。
殺人事件が起こり、男が巻き込まれ、「探偵」も登場します。
でも、普通のミステリー小説のような、
「伏線があり、それを回収し、最後にどんでん返し!」みたいな謎解き小説ではないんですよ。
謎解きはされるけど、それはこの小説風いえば、
「見たい現実、一番納得し理解できるストーリー」が、あえて描かれいると思います。
真実であるかは重要でないって言えばいいのでしょうか。
※謎解きなんて、結局はご都合主義の、奇跡の状況が生み出す産物って、いっちゃえるんですよねw
てことは、この本でも何度も述べてます。(それを楽しめるかが問題、うん重要なんですよ)
繰り返しになりますけど、この小説は、この男の思考、嗜好、志向の仕方に興味を覚え、
会話での言葉の掛け合いなどを楽しむことができるかだと思います。
(30代でしたら、昔のアニメ、特撮(ウルトラマン)のセリフ引用にニヤッてしますよw)
※文庫だったら、簡単にすすめるんですけどねー
人により好き、嫌いあるとおもうんで、
ちょっと貸してあげるから読んでみなよって感じでオススメです。
図書館などでは、どうでしょうかね。
麒麟の翼 (特別書き下ろし)
東野圭吾ファン、特に加賀恭一郎シリーズの大ファンで一作目から欠かさずに読んでいます。
しかし、あえて厳しく言わせてもらうと、「シリーズ最高傑作」とは感じられませんでした。
最近の作品は謎解きよりも人間ドラマの要素が濃く、特に「新参者」は人情ドラマに涙したり、
連作のようで最後につながっていく構成もよかったし、「新参者」のほうがよかったと思う。
本作も日本橋、それも地名ではなく橋の「日本橋」を舞台にし、テーマはよかったと思うし、
ただ犯人を捕まえるだけではない、加賀シリーズならではの救いもある。
ドラマの影響なのか、加賀と松宮のコンビのやりとりが軽く、どうしても小説の加賀恭一郎ではなく、ドラマの加賀恭一郎が頭にちらつく。
そのためかれまでのような物語に深さが感じられず、薄っぺらく感じてしまう。
自分としては小説とドラマの加賀は雰囲気が異なり、別のキャラクターとして捉えているし、
小説はこれまで積み重ねてきた「小説の加賀恭一郎」として描いて欲しいと思うのは私だけだろうか。
ただ、するどい観察眼や推理力は健在であるし、「原点」「起点」をキーワードに日本橋の麒麟(の翼)に思いをのせているのは、
やはり胸を打つ。実際の「麒麟の翼」を見てみたくもなった。
「シリーズ最高傑作」と謳っているだけに、厳しく見て物足りなさを感じてしまったが、
それでも、加賀シリーズは続いてほしいし、シリーズのファンには読んでもらいたいです。